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【揺れるシセツチョー】ケツの穴の小ささについて または個人のスマホを職場で充電してはいけないのか

青空 杉本裕仁 2017

 

オーストラリアの巨大岩石「ウルル」(エアーズロック)は、「世界のヘソ」と言われている。じゃあ、「世界のケツの穴」はどこなのだろう。分からない。分からないが何となく最近、世界のケツの穴が小さくなってきているな…と思うことが多い。それはもちろんいい感じではなく、非常に息苦しい、居心地の悪い感覚である。

 

ある日のスウィング、終礼の時間。誰でも、どんなくだらないことでも言っていい(言わなくてもいい)、いつもの空気感の中で、いつものようにゆうと君がひょいと手を上げて、「じゅうでんして、すみませんでした!」と言い、ぴょこんと頭を下げた。これはいつもの「昨日の晩、何食った」とかいう、眩いばかりにどうでもいいことではない。軽く受け流すわけにはいかない。その日の昼休み、スウィングのある場所で、ゆうと君は自分のスマホを充電しようとしたらしい。すると傍にいた人たちの多くから「アカン!」「ダメ!」、そうした注意や叱責の集中砲火を受けたらしい。僕がその何分後かに事情を伝え聞いた時、頭ごなしに四方八方から責められたことが悔しかったのだろうか、ゆうと君は黙り込んで怒っていた。「スマホの充電くらいええんちゃうん」とかいう意見は1つも無かったのだろうか。結論を急がず、ちょっと立ち止まって考える人は1人もいなかったのだろうか。僕はシンプルに「なんてケツの穴の小さい話だろう」と思いながら、「充電無かったら困るもんなあ」とゆうと君のスマホを充電した。ええやん、ええやん、これくらい。こんなん、誰にでもあることやろ。…が、その数時間後、ゆうと君は不特定多数の、顔の見えない大勢に対して一方的に頭を下げ、しおらしく謝ったのだ。「職場ですべきじゃないっぽいこと」に対する即時的且つ大多数且つごもっともな正義に力技でねじ伏せられたのか。あるいはゆうと君自身が「みんなの言う通りスマホを充電するのは良くないな」と思い直したのか。僕はショックを受けながらも「スマホの充電がいけないのなら電子レンジを使ってお弁当を温めている人は? ガスを使ってカップ麺のお湯を沸かしている人は? 電気をつけて化粧直しをしている人は? ロッカーに私物を入れている人は?」等々並べ立て「良いか悪いかはスウィング中のコンセントが充電器で埋め尽くされた時に考えればいい。問題になる前から問題視するのは良くないのではないか」という私見を述べた。

 

目の前にあるのは常に歴史上はじめての風景であるはずなのに、「善」か「悪」か、「公」か「私」か、すぐに白黒をつけたがる風潮が蔓延している。個人による殺人は圧倒的な悪であるのに、国家による大量殺戮は正当化されたりする、そういうデタラメな世界に僕たちは生きているというのに。テレビをつければ一度の失敗を犯してしまった人への大バッシングが執拗に報じられている。問題をこれでもか! と拡大化し、問答無用の正義によって、問答無用の悪を、問答無用に押し潰さんとする光景には、「自分も失敗するかもしれない」という想像力の欠如というより、「失敗すること」に対する過大な恐れが満ち満ちているように見える。いずれにせよ、そこにあるのは「人間」という不完全な器の度量を遥かに超えた、「失敗は許されない」という誇大妄想であり、大いなる勘違いである。

 

違う。「人間」はちゃんと、失敗するようにできている。

 

「ケツの穴の小ささ」とは、他者に対する、ひいては自分自身に対する不寛容さと言い換えることはできまいか。スマホの充電ごときで誰かが死ぬわけでもないし、誰かの一度や二度の失敗が、世界を破滅させたりはしないだろう。安易に振りかざすケツの穴の小さい正義や正論は、結果的には自分自身の首を絞めてゆくことになる。誰かに対して禁じたことは自分自身にとっても禁じ手となり、その反対に誰かに対して投げかけたOKは、きっと自分自身の何かを赦し、少し呼吸をしやすくさせてくれる。もうルールは腐るほど用意されているし、もう皆十分に頑張っているのだと思う。だから、NGやアウトや過剰なリスクマネジメントではなく、できればOKやセーフや「よっしゃ! 今から失敗するぜ!」「よ! ナイス失敗!」といった寛容さや余白を、世界に増やしてゆきたいと願う。テレビやネットやどこかの遠い国ではなく、目の前を通り過ぎてゆく日々を、注意深く眺めながら。

(フリーペーパー「Swinging Vol.23」より転載) 

 

文・木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

NPO法人スウィング理事長。1977年生まれ・愛媛県出身。立命館大学文学部日本文学専攻卒。NPO、演劇、祇園のスナック、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑えるよ」という友人の勧めで障害のある人に関わる仕事に就く。2006年にNPO法人スウィングを立ち上げ、「障害福祉」の枠を超えた創造的な取り組みを通して、社会を変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。黄色が好き。でも青も好き。

 

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