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【ariya. 26号】一般就労 vs. 福祉就労 〜後篇の次〜 

                                      海/たなかこまり/2015

 

予想外に長きに渡ったこのシリーズも今回でいよいよ最終回である。「後篇の次」てなんやねん…。だから、プロゴルファー猿とか紅蜂とか余計なことはもう書かない。だって、字数が決まってるんだもの!…と言いつつ、既に余計なことを書いているな。馬鹿は死ぬまで治らない。ああ、残念だ。ああ、かあちゃん、ごめんなさい。

本題に入る。後篇ではキョウイチさんの20年に渡る壮絶な「一般就労」の顛末と、その後のスウィングでの変貌について紹介した。ここからは凝り固まった就労観をまた別の意味で覆すような、2人の例を挙げてみたいと思う。

 

2年前からスウィングのメンバーとなったコニタン。いつもお洒落で人当たりも良く、一見「普通」 ―「普通」の定義はここではつっこまないで。「普通」は「普通」じゃ! ― の、なんの“生き辛さ”も抱えていないかのように見える男であるが、例えば人との距離感が上手く掴めなかったり、雷注意報が出てるだけで家に帰り辛くなったり、その他もろもろ、細かな“生き辛さ”が多層的に積み重なった、なかなかしんどい人生を歩んでいる。ちなみに飲めばゆるゆるリラックスできるので、雷注意報に備えてスウィングに酒を常備しておくよう、僕は彼にアドバイスをしている。ところでコニタンは、なぜスウィングにやって来たのか? 彼は元々神奈川県在住で、別の福祉施設で「福祉就労」をしていたのだが、「スウィングで働きたい!」という思いを胸に、わざわざ単身、京都に引っ越して来たのである。「あの企業で働きたいなあ」と、体ごと移動する例は山のようにあるに違いないが、「あの福祉施設で働きたいなあ」と、「福祉就労」の場から新たな「福祉就労」の場へと遠路はるばる引っ越しまでしてしまう。…これはなかなか珍しい例なのではないだろうか? コニタンの思いと行動力(と経済力)に感服すると共に、「福祉就労」の新たな可能性のひとつを見たように感じている。

 

もう1人、およそ1年前からスウィングで働きはじめた、たいと君を紹介しよう。たいと君はスウィングに来る前、「一般就労」の場であるフランス料理店で働いていた。けれど仕事に遣り甲斐はあっても、なかなか話し相手もできず、昼休みなどはいつも孤独に過ごしていたらしい。そうした状況の中、「一般就労」では得られないものがあるのではないか…と考えたお母さんがスウィングを訪ねてきてくれたことが、たいと君の「福祉就労」のはじまりとなった。たいと君は「オレたちひょうげん族」に所属しているが、(過去のトラウマのせいもあってか)色々と迷いも多く、はっきり言って表現活動はまるで順調に進んでいない。けれどたくさんの人と話したり笑い合ったり、のびのびとスウィングの日々を楽しんでいることに間違いはないし、そのことが即ち“「一般就労」では得られないもの”なのだと思う。…さて、実はここからがポイントである。たいと君はスウィングで働きはじめた。けれど一方でフランス料理店の仕事もずっと続けているのである。具体的にはスウィングで週に3日、フランス料理店で週に2日働くというスタイルだ。「福祉就労」の場でしか得られないものがあるのと同様に、「一般就労」の場でしか得られないものもまたある。それらをバランス良く掛け合わせることによって、たいと君の毎日は形作られているのだ。なんて素敵な生き方、働き方だろうか。僕はこのたいと君の働き方を「ハイブリッド就労」と(勝手に)名づけ、多くの障害のある人にとって、ひとつの理想的な「働き」の形なのではないかと考えている。

 

「一般就労」と「福祉就労」。ふたつの就労の在り方を二項対立的に語ること自体、もうおかしいのではないだろうか(僕のことじゃないか。えへ)。それはただ「合う」「合わない」の話であって、どちらが上下という話でも決してない。「一般就労」が合うという人は胸を張ってそうすればいいし、「福祉就労」の方が合うという人はやはり胸を張ってそうすればいい。スウィングでは人の「働き」を「人や社会に働きかけること」と定義づけ、お金だけに捉われない、多様な「働き」の形を創造・実践し、発信を続けてきた。もちろんお金も大切だし、そのことを決してないがしろにはしていない。けれどやっぱり、人が生きること、働くことの意味や目的は、お金だけではない。スウィング・メンバーのおよそ半数がかつて「一般就労」を経験し、「福祉就労」の場であるスウィングにやって来た。そしてその多くは(恐らくいい意味で)「一般就労」をきれいに捨て去り、「福祉就労」の場であるスウィングでの「働き」に遣り甲斐を感じ、楽しみ、社会や誰かの役に立っていることを実感している(はずだ)。「金は無くとも心は錦」なのである(はずだ)。

 

さあ、最後はやっぱりキョウイチさん。ある時「昔みたいに稼げる仕事に就けるとしたらどうですか?」と尋ねられると、「いやあ、もう無理やろ」と答える。「何が無理なんですか?」「そりゃあ、まあ、人間関係」。20年以上に渡って孤独であることを余儀なくされ、人間関係を持つことすら前提に無かった男が、笑顔でこう答えたのだ。僕らはキョウイチさんに心から言いたい。出会ってくれてありがとう、と。

 

木ノ戸昌幸(NPO法人スウィング 理事長)

※ この文章は「ariya. 26号」(2016年7月1日発行)より(随分時間経ってしまいましたが!)転載しました。

※ 前篇はコチラ → 後篇はコチラ →

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アリヤは、福祉施設で作られる製品や福祉の活動を中心に紹介します。製品の良さを知ってもらい、購入してもらうことで、障害者の雇用促進と自立支援をめざしています。印刷は福祉工場で行っており、購読料の一部は障害のある方々の工賃に繋がります。アリヤは、広告に頼らず、読者が支える本です。ひとりひとりの存在は小さいけれど、みんなで助け合い、支えあえばきっと誰もが幸せに生きていけるはず。地に足をつけ、蟻の目線でゆっくり歩いて行きたい。そんな思いをこめて『蟻の家=アリヤ』と名付けました。(アリヤWEBサイトより)

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