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【揺れるシセツチョー】「目に見えないモノ」だらけ

新しい家が欲しい/後藤実/2016

 

大型ショッピングモールに行く。滅多に行かないが、時々は行く。そこには楽しそうな表情を浮かべた人、明らかに苛立っている人、無表情に淡々としている人、本当にたくさんの人がいるが、僕は同時に「そこにいない人たち」について考えることがある。こんなにもたくさんの人が、今、当たり前のように目の前にいるが、この場所に来たくても来られない人はどのくらいいるのだろうか、あるいは存在さえ知らない人は一体どのくらいいるのだろうか、と。来れたら幸せ、来れなければ不幸せというのではない。ただ、賑やかに晴れやかに、まるでこの時代や社会を端的に象徴しているかのような大型ショッピングモールという景色の中で、「そこにいない人たち」に思いを馳せる時、世界が決して「目に見えるモノ」ばかりでできているのではないという単純な事実を、分かりやすく感じることができる。

 

いつの頃からか、月に1、2回、目の見えない人に鍼を打ってもらうことが習慣化している。お店に入って予め指名した人(当然「達人」を指名する)と「こんにちは」と出会う時、いつも僕の心は少しばかりほっとするのだが、それは恐らく、自分の姿を見られていないことに対する安堵感のようなものだと思う。そしてベッドに寝そべり、いざ施術がはじまると(もちろん目で見られているわけではないのだが)、今度は自分の身体の奥深くまで、優しく丁寧に見られていることの心地良さを感じはじめる。誰かが「怖い! 鍼は目の見える人に打ってほしい!」と言ったのには笑ったが、なるほど、まあ分かるような気もする。けれど、この安堵感や心地良さの正体は一体なんなのだろう。

 

先日訪れた京都の北部の方(つまり田舎の方)のある温泉には「浴室内で喫煙しないこと、発見したら即出入禁止」といった旨の貼り紙がはられていた。浴室内で喫煙する人がいるのか!? …というシンプルな驚きと、そりゃ最低限のマナーは守らなあかんよなという思いとともに、1回失敗! 即退場! という寛容さに欠ける風潮が、社会の隅々にまで浸透しているのを目の当たりにしたようで、なんだか暗澹たる思いに包まれた。映画館に行くと、あれも禁止! これも禁止! のオンパレードが続く。やはりマナーは大切だと思うけれど、前の席を蹴ってしまったなら「あ、すみません」でいいのではないのだろうか。誰かによって都合よく作られた「べき」やら「ねば」やらおせっかいに囚われ、思考が、身体が、行動が萎縮してゆく。何かもっと大切なことがなおざりにされているような気がする。

 

ある時、スウィングのある人の危機的な状況について、また別のある人がこう言った。この状況はピンチではなくチャンスなんだと。それもその人固有の問題ではなく、スウィング全体がより良くなるチャンスなんだと。皆が皆じゃないにしても、こうした発想が「誰か」から生まれるこのスウィングという場を、僕は誇らしい! 素晴らしい! と素直に感じた。個の問題を個の内に留めず、もっと全体をいい感じにしようぜ! という捉え方は、僕が考える「アート」にとても似ている。私的な(そして多くの場合、非常に切実な)問題や美意識なりを、「普遍性」「全体性」を有するものに高めること、その過程にこそ「アート」は在るのではないか、あるいはそうした過程をこそ「アート」と呼ぶのではないか、そんな風に考えている。もちろん作品としての「アート」があることは確かだが、過程無くしてしそれが生まれ出ることはない。卵が先か? ニワトリが先か? の話に似ているけれど、僕としては作品としての「アート」(=ニワトリ)が成立するまでの過程に宿る、目に見えない「アート」(=卵)の方に興味がある…というか日々魅力を感じ続けている。

 

この世界で生きてゆくことは、多くの「目に見えないモノ」によって支えられ、時には阻害されている。「縁」とか「運」とか、年を取った人たちはさらっと何気なく言うけれど(…偏見だろうか?)、それらは本来さらっと言えてしまうくらい、当たり前に大事なことなのだと思う。北野武監督・映画「座頭市」は小石につまずいて転んだ座頭市の「いくらめいっぱい目をおっぴろげても、見えないもんは見えないんだよなぁ」というセリフで締め括られる。映画を観た当時はこのセリフ要らん! と残念に思ったものだが、今この歳になってようやく、このラストの意味が我が身を通して少し分かる気がする。

(フリーペーパー「Swinging Vol.22」より転載) 

 

文:木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

NPO法人スウィング理事長。立命館大学文学部日本文学専攻卒。NPO、演劇、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑えるよ」という友人の勧めで障害のある人に関わる仕事に就く。2006年にNPO法人スウィングを立ち上げ、「障害福祉」の枠を超えた創造的な取り組みを通して、社会を変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。

 

※ フリーペーパー「Swinging」は、スウィング賛助会員の皆さまからの会費を原資に制作・発行を行っております。→
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