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【ariya. 25号】一般就労 vs. 福祉就労 〜後篇〜 


                                            津軽海峡冬景色/西谷文孝/2015

(前編のあらすじ)
粉雪のように降り積もる紅蜂への恋心を振り払うかのように荒れ狂う日本海へとやって来た猿。ひとり岸壁に立ち「ワイは猿や…プロゴルファー猿や…」そう呟くように言いながらドライバーを構えた時、ふとこう思う。「…高波にのまれる人がいる。確実に毎年ニュースで聞く。ということは危ない時に高波を見に行く人の実数はもっともっと多いはずだ。それは一体どれくらいなのだろう?」「十倍くらいじゃない?自殺者にしたって何にしたって、そういうのって十倍くらいを実数だっていうじゃないの。一体どんな根拠があるっていうのかしらね。」— 驚いて振り返る猿の目に映る愛しい人の姿!…果たして紅蜂は猿を追ってきたのだろうか?…そして2人の許されぬ恋はどこへ向かおうとしているのだろうか?…ていうか猿はどうでもいい疑問を知らぬ間に口に出してしまっていたのだろうか?— 後篇に続く。


…はい、すみません。嘘です。(本当の)前篇については、スウィングのブログ「Swingy days」に転載(ネット検索、「アリヤ 24号 就労」で多分出てきます)しておりますのでそちらの方をご覧になっていただければ!もしくは「ariya.24号」のご購入を!(前篇はコチラ!→

…本題に入る。理想的とされる「一般就労」としゃあなし的に捉えられがちな「福祉就労」。このほぼ固定化して揺るぎない就労観に対して—少なくとも今のこの社会状況(年間自殺者3万人?過労死認定1,000人?もうとっくに破綻しているではないか)にあっては—大いなる疑問を抱かざるを得ない。僕はこれまでの僕自身の人生を通して、いい大学に入って、いい会社に入って…といった、いわば王道の価値観を(心身ともに)“ただの一度も”腑に落とすことができなかった。そしてそうできないことに対し、酷く苦しんだ時期もあった。僕なりの苦悶苦闘の末、「毎日笑えるよ」という友人の言葉に導かれ、この障害福祉業界に足を踏み入れたのが25歳の頃。そこに儲かるとか儲からないとか、生活をしてゆけるとかゆけないとかの計算は(残念ながら)一切無く、「毎日笑えるのであればそれは最高だ!」というこの上なくシンプルな思いだけで人生の舵をひょい!と切ったというのが嘘偽りない事実である。つまりこうした僕自身の個人的背景が「一般就労」万歳!「福祉就労」残念!的な雰囲気に対し、問題意識を向けることの発端になっているには違いないのだが、近年、この問題意識を更に良い意味で混乱させるような、あるいは具体性を伴って深めさせてくれるような人々が、スウィングという場に続々とやって来たのである。

男ド演歌・山川豊似、四十を超えたばかりの(一見)シブい男、キョウイチさん。キョウイチさんは20年間の「一般就労」(木材店勤務)の果て、会社の都合によりクビとなり、およそ4年前にスウィングにやって来た。寡黙、実直、クソ真面目。誰とも必要以上の会話をせず、ただ黙々と仕事に打ち込む無表情な男の姿は、スウィングでの日々を一日一日積み重ねるうち、正に劇的に変わってゆくこととなる。会話が増え、笑顔が増え、冗談が増え、増え、増え、増え、遂にはくだらない冗談しか言わないような人へと物の見事に様変わりしたのだ。木材店勤務時代の20年間、キョウイチさんは殆ど誰とも口を聞かず(言葉を交わす相手がおらず)、無論冗談など“ただの一度も”口にせず、ひたすら同じ作業を繰り返す日々だったという。更に驚いたことに、当時それなりの収入を得ていたキョウイチさんは…にも関わらず“銀行への処し方”を一切知らなかったというのだ。毎月の給料は銀行口座へと振り込まれるが、お金を下ろす方法は分からない。でも自分の手には給与明細というものがある。よし、今月も頑張った。どうやらここに書かれている金額が銀行に振り込まれている「らしい」。…なんとキョウイチさんはこの「らしい」だけを頼りに、20年という長い歳月を、ただ黙々と、本当にただ黙々と働き続けたのである。(結果として残った相当額の預金が、現在のキョウイチさんの生活費となっている。)

僕はキョウイチさんのこの強烈な20年と、その後のスウィングでの変貌ぶりに多くの思いを寄せずにはいられない。(そこにはキョウイチさんの持つ障害とか家庭環境とか色々な要素が含まれているには違いないが、事の本質とは関係無いと思う。)今、キョウイチさんは笑顔で語る。「まさか友達ができるとは思ってなかった」と。スウィングという「福祉就労」の場にやって来て、キョウイチさんの収入は激減した。けれどキョウイチさんが得たものの大きさは「効率」や「お金」といった尺度では決して測り得ないものであり、そうした価値がこの世の中に確実にあるのだということをはっきりと教えてくれる。「お金」とは何なのだろう?働くとは何なのだろう?そして人が生きることとは何なのだろう?

…とかなんとか言ってるうちに後篇でも全然終わらず!だってキョウイチさん、オモロすぎるんやもん!というわけで次号、「後篇の次」に続く。

木ノ戸昌幸(NPO法人スウィング 理事長)


※ この文章は「ariya. 25号」より転載しました。

※ 後篇の次はコチラ → 前篇はコチラ →



ひらめきアリヤ ariya. とは? 〜始まりは、小さな一歩。〜
アリヤは、福祉施設で作られる製品や福祉の活動を中心に紹介します。製品の良さを知ってもらい、購入してもらうことで、障害者の雇用促進と自立支援をめざしています。印刷は福祉工場で行っており、購読料の一部は障害のある方々の工賃に繋がります。アリヤは、広告に頼らず、読者が支える本です。ひとりひとりの存在は小さいけれど、みんなで助け合い、支えあえばきっと誰もが幸せに生きていけるはず。地に足をつけ、蟻の目線でゆっくり歩いて行きたい。そんな思いをこめて『蟻の家=アリヤ』と名付けました。(アリヤWEBサイトより)

→ アリヤ ariya. 
http://www.arinoie.com  

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