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【Interview 01】向こう側にあることを変えるために


2015年12月1日、フリーペーパー「Swinging Vol.19」を発行しました。お陰様で大好評!6,000部がもうあっと言う間に無くなりそうな状況です!特集は前号18号に続く『ちょっと奥さん!「障害者アート」がキテるんだって! Part.2』。通常3Pの特集ページを(いつもはあるはずのコーナーを削ってまで)ドドーーーン!と16Pに超大幅増!業界を牽引するトップランナーたちへのインタビュー等を通じて、昨今の「障害者アート」を取り巻く現状が孕む種々の課題や問題点、表舞台にはなかなか見えてこない思いや葛藤を浮き彫りにしようと試みました。…で!あまりに充実した濃い〜内容となりましたので、本日より3日連続!森下静香さん(たんぽぽの家/奈良)、櫛野展正さん(鞆の津ミュージアム/広島)、齋藤誠一さん(社会福祉法人グロー/滋賀)のインタビューを本ブログに転載します!ニッチでマニアックな話題であることは重々承知しつつ、今!このタイミングだからこそ!是非ともご一読ください!

ひらめきインタビュー実施日:2015年10月27日@たんぽぽの家アートセンターHANA(奈良県奈良市)
ひらめき
お話を聴いた人:森下静香さん/たんぽぽの家(奈良)
ひらめき聴き手:木ノ戸昌幸/NPO法人スウィング(京都)

森下静香(もりした・しずか)

一般財団法人たんぽぽの家・常務理事。障害のある人の芸術文化活動を中 心としたアートプロジェクトやセミナーなどのプログラムの企画運営、調査研究や出版事業などを行う。また、医療や福祉の現場におけるアート活動の意義について考え、その価値や研究の成果を共有するアートミーツケア学会の事務局をつとめる。

たんぽぽの家
1976年に障害のある人をはじめ、子どもや高齢の人など誰もが地域で生きていくことを支えるために、文化の力を活かし活動する市民団体として 奈良県で設立。国内外の団体とネットワーク型の活動を推進し、市民文化・ 社会づくりに貢献することをめざしている。1995年に「エイブル・アート・ ムーブメント(可能性の芸術運動)」を提唱し、アートや人間の可能性を再発見する活動を進めている。


皆さん、「エイブル・アート・ムーブメント」って知ってますか? そんなん提唱するポップでアートで洗練された「家」が本当にあるのか!?? と驚愕してから幾年月…。(家じゃないけど)本当にあるんです! 今ではちゃんと知ってます! というわけで「たんぽぽの家」さんにお邪魔し、森下静香さんにお話を伺いました。

−まずは「たんぽぽの家」について教えてください。

森下:1970 年代前半に、養護学校を卒業した後のわが子が「地域で生きがいをもって暮らせる場をつくりたい」と運動をはじめていた母親たちに、当時、新聞記 者であった播磨※ 1 が出会い、いっしょに「たんぽぽの 家」づくりを進めていきました。当事者だけでなく、誰にとっても生きやすい社会をつくるため、音楽などの文化の力に着目し、さまざまな人たちが関わり、共感をもって取り組める文化運動として展開しました。現在の「たんぽぽの家」は、市民による運動体としての「一般財団法人たんぽぽの家」と、福祉サービスを主に行う「社会福祉法人わたぼうしの会」、そして、会員組織 であるボランティア団体「奈良たんぽぽの会」の3つの組織で構成されています。



2015年の「たんぽぽの家アートセンターHANA」夏休み特別プログラム「大相撲たんぽぽ場所」

※1 播磨靖夫氏。一般財団法人たんぽぽの家理事長、社会福祉法人わたぼうしの会理事長。平成21年度 芸術選奨 文部科学大臣賞(芸術振興部門)を受賞

−当初から文化運動と位置づけておられたのは驚きです。「たんぽぽの家」といえばこれ! というわけでもないんですが、そうした文化運動の延長線上にある「エ イブル・アート・ムーブメント」(可能性の芸術運動) を提唱しはじめたきっかけはなんだったんでしょうか?

森下:
時代背景としては、阪神・淡路大震災やオウム事件など、日本社会が揺らいだ時代でした。「たんぽぽの家」の運動の中で出会ってきた人たちは、それぞれに個々のアート活動を行っていましたが、中心となるその人がいなくなると、その活動も終わってしまう。そうならないように、社会的にも必要なものであると「繋いで見せていく」ことが大事であると感じ、1995 年に「エイブル・アート・ムーブメント」を提唱しました。「エイブル・アート・ムーブメント」※2が、地域に根づくための手法のひとつとして、1996 年にスタートした「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」があり、7 年間で34都市、計63回のフォーラムを開きました。その地域ごとにいる美術の先生、養護学校の生徒や教師、アーティスト、障害のある当事者、福祉施設職員たちが集まり、実行委員会形式をつくってお互いにエンパワメントしていくという、種まき的な活動を行っていました。

※2 市民による芸術運動。「エイブル・アート(可能性の芸術)」という言葉には、障がいのあるなしにかかわらず、アートを通して人間の可能性を追求していくこと、そして可能性を排除せずによりよく生きていこうというオルタナティ ブな志向への意識が込められている。

−「エイブル・アート・ムーブメント」はひとつの運動であって作品そのものを指すものではないですよね。しかし現状としては「障害者アート」の一ジャンル的に誤解されて伝わっている側面が強いように思います。

森下:その方が分かりやすいのかもしれないですね。自分たちは「エイブル・アート」を作品と言ったことは一度もないし、作品をアウトプットする際に、「エイブル・ アート」と名づけることもしていません。そもそもこの作品は「エイブル・アート」だとか分ける意味がないと考えています。ただ、主催者側の希望で「エイブル・アー ト展」とすることは確かにあるんですが。

−「アートの社会化」「社会のアート化」、そうしたキーワードとともに本当に多彩なアートプロジェクトを実施しておられますが、なぜ「アート」なのでしょうか?

森下:
私自身は「アート、アート」言いつつも、実はどっちでもいいような気もしています(笑)。アートの解釈は人それぞれですが、その人がその人らしく充実して生きていくことを支えるために「アート的なもの」が力になるんじゃないかなと考えています。法・制度からこぼれ落ちる部分、法・制度によりできないことが、「アート的なもの」があることで、もっと意味のあるものになるんじゃないかなあと。アートを社会化すること、社会をアート化すること自体に目的はなくて、その向こう側にあることを変えるために必要なんでしょうね。その一方で、純粋にアートそのものに驚き、感動させられる部分も大切にしています。

−なるほど。やはり「エイブル・アート・ムーブメント」 はまさに社会変革のための運動なんですね。ただ一方では今の「障害者アート」を取り巻くひとつの問題点とし て「作品至上主義」という言葉が使われています。この点についてはどうお考えですか?

森下:
障害のある人のアートを美術館に展示したり、 海外に発信したりして、価値・クオリティーの高いものを収集しているというのが、最近言われている「作品至上主義」なんだと思います。作品として極めていったらいい部分もあるだろうし、価値の高い作品をアウトプットしていくことも大事だとは思いますが、 ただそれが障害のある人のアート活動の「一側面」であることだと分かっておく必要があると思います。例えば「たんぽぽの家」のアートプロジェクトでもある 「プライベート美術館」※ 3 は、お店の人たちに自分の好きな作品、自分のお店に飾りたい作品を、自分の感性で選んでいただく。それは、他の人には価値のないものかもしれないけれど、その人にとっては価値があり、その人の感覚で選ぶということ自体が大事だと感じています。 「プライベート美術館」は、「アートの社会化」と「社会のアート化」、その両方の側面を持っています。



商店街のお店の店主が自分の感覚で選んで飾る「プライベート美術館」

※3 障害のある人のアート作品を店舗や事業所等に一定期間レンタルし、展示。これまで接点のなかった人々が、障害のある人のアートに出会う機会をつくることを目的としている。

−前号のアンケート調査の結果についてはどう見ましたか?

森下:
2020年の東京オリンピック・パラリンピック に向けて、国や行政が障害のある人のアートに注目し、 色々な事業をはじめているのは「キテる」表れかもしれませんね。でも、現場レベルではまだまだ「キテない」というのが実感です。
例えば障害者福祉施設を訪問した時、インクの出ないマジックを使う障害のある人に気づかないスタッフを見たりすると、その人の忙しさはもちろん分かるのですが、もっとキテ欲しいなと思います。そのためにはいろいろな支える仕組みも必要です。アート活動に取り組みたいと思っている障害のある人が、普通にアートを選択できるところまでいったら画期的だと思いますが、今の盛り上がりが2020年以降も継続、持続されるのかが心配です。2020年までは発表の機会があって、それぞれの現場が力をつけられるようなサポートができたらいいけれど、それ以降何もなくなったら元も子もないですよね。ただ、「たんぽぽの家」としては国や行政の後押しがあろうとなかろうと、やるべきことを続けてゆくだけ、というところはあります。

−国は「アール・ブリュット」という発信を全面的に押し出していくようですね。

森下:
「アール・ブリュット」という定義だけで障害の ある人の表現や作品をみてしまうと、漏れ落ちるものがあると思います。私も「アール・ブリュット」を代表するような作品に惹かれることもありますが、周りの人や作品をみると明らかにその定義に当てはまらないこともたくさんあります。障害のある人も、そこから生まれる表現も多様です。本来は「アート」でいいのだと思います。むしろ、ジャンルに分けて納得してしまうよりも、アートの意味やそのことを通して豊かに生きることの意味を考え続けていくほうが大事だと思います。思考をとめてしまったら、そのことが本当に障害のある人にとって、結果いいことなのかも分からないですから。



障害のあるアーティストがアートの先生になって学校にいく「アートクル」

−「エイブル・アート・ムーブメント」の20年の歩みをどう感じていますか? また今後の課題としてはどんなことがあげられるでしょうか?

森下:
20年前に比べると障害者アートに関わろうとする人が明らかに増えていると思います。アートができる施設を作りたいと思い、立ち上げる人も増えたように思います。昔からやっていたけど発表する機会がなかった、方法を持っていなかったという人や施設も多かったんでしょうね。
課題としては、「もっと売っていく」「所得に換えていく」 という部分ではまだまだかなと。ひとりひとりに合わせた仕事や、その人を活かした仕事づくりなど、生きがいの部分としてできてきたことはあるかもしれないけど、まだまだ所得に結びつけられていないですね。そのためには障害のある人の作品に対して、批評の場や議論できる場がもっとあってもいいと思うんです。TVや新聞などのメディアも、単にアートをやってる障害者がいきいき活動していますとか、国の方針や施策などを取り上げるだけでなく、もっと先に目を向けた発信をしてほしいし、そう期待しています。
その一方で、作品がいいとか悪いとかだけじゃなくて、もっと現場で起きていることを言語化して伝えてゆけたらいいですね。「今、ここで起きていること」にどういう意味があるのか? ということを、もっと私たち自身が言葉にしないといけないと思います。意外と実践のことを的確に伝えるのって難しい。ある一面しか伝えられていないというか、そこにあるもっと普遍的なものを伝えられたらいいなと思います。

−同感です。そうした部分をアート的な手法で伝えることはできないんでしょうか?

森下:
きっとできると思うんですけどね…。「存在と生活のアート」※4はそうした試みでもあったんですが、展覧会の開催だけでは十分ではないですね。アーカイブされて見られるとか、そういう工夫がもっとできるといいですね。

※4 表現されたモノだけではなく、そこから生まれる「コト」も含めて立ち現れるアート。「人間が生きる」をさまざまな形で見せるシリーズ展。

−今後、思い描くものは?

森下:
運動の先に何があるかはよく分からないんです。でも「わたぼうし」※ 5 なんかは実際に形が変わってきています。社会とともに、求められるものも変わってきているんでしょうね。大きな目的は持ちつつ、その時々によって、ニーズによって変わっていくのかなとは思います。こんな風にしたいと考えることはたくさんあるんですが、間に合ってないというか、追いつけていないのが現状です。
厚労省の事業で昨年、障害のある人の「アート相談」を実施したんですが、多かったのは当事者からの相談。「たんぽぽの家」のような施設ではなくて、日中は企業などで働いている人や家で過ごす人たちが作品をつくっている場合、作品を発表する機会は公募展ぐらいしかないんです。認められる場を作っているという点では良いことではあるんでしょうが、もう少し地域の中で「アート」というものを通して交流できる仕組みや、そうした人たちが集まってサークル的に展覧会をするとか、もっと生きがいを持てる場や社会参加の場づくり、ネットワークづくりを進めていきたいなと考えています。
次に「やりたいこと」「やるべきこと」がどんどん出てくる。そういう風に運動は続いていくって感じですね。

※5 1976年より「たんぽぽの家」が主催する「わたぼうし音楽祭」。障害のある人たちが書いた詩をメロディーにのせて発表し、2015年には40周年を迎えた。

−あえてお聞きしたいんですが、「アート」以外のアプローチの仕方もあるのではないでしょうか? 「キテる」一方で、どこか行き詰まり感のようなものも感じます。

森下:
「アート」という文脈じゃないアプローチがあっても別にいいのかなって思います。「アート」って一分野というよりは、技術的なものでもあるんじゃないかと。それによって考え直すことが出来たり、いろんなことを振り返るという意識を感じさせられたり、そこにある価値を疑ったり、何かの気づきを与えるものだったり。「アート」を「Good Job! プロジェクト」※6 のようなもっと大きなコンセプトの中に踏まえていくのもこれからの目標のひとつです。障害のある人に絵を描かせよう、仕事をさせようではなく、もっと一緒に社会の中で仕事を作っていこうというところに、もう1回帰りたいなとあらためて思っています。もっと「私のこと」としてできたらいいなと思いますね。

※6 障害のある人と協働し、アート・デザイン・ビジネス・ 福祉の分野を超えて、既存の労働観にとらわれないユニークな発想で「障害のある人の可能性を生かした新しいしごと」や「アートやデザインの力を生かした創造的なしごと」、「先駆的・革新的・実験的な取り組み」等の仕組みをつくるプロジェクト。2016年には、その拠点としての「Good Job! センター」(日本財団助成)をオープン予定。
(フリーペーパー「Swinging Vol.19」/特集『ちょっと奥さん!「障害者アート」がキテるんだって!Part.2』より転載) 


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