Swingy days Enjoy! Open!! Swing!!!

サイトトップへ戻ります。
<< 第85回ゴミコロリ | main | 虫になった男 >>
アブノーマライゼーション
文・木ノ戸昌幸(NPO法人スウィング理事長)

友人のゆきちゃんが、とあるテレビ取材を受けた。テーマは「いきいきと子育てをする母の姿」。地方局の、たった5分という放送時間だったが、ゆきちゃんは悩みに悩み苦しんだ。メディアが視聴者受けする最大公約数を伝えたがること、場合によっては事実と異なったことや自分の意に反したことすら伝えようとする危険性を、重々承知していたからだ。そして何より彼女が恐れたのは、重度の障害のある我が子が必要以上にクローズアップされ…“にも関わらず”頑張って笑顔で生きてます!という予定調和的な、あるいはお涙頂戴的な(つまり24時間テレビの念押し的な)ママの姿が映し出されることであった。そういうのはもうたくさんだ。実際そんな風に生きてもいないのに、メディアや視聴者の思惑通りに消費され、安直な美談の再生産に加担することになったらどうしよう…。そうしてゆきちゃんは決して短くない1ヶ月という取材期間中、頭を抱え悩みに悩み、取材陣と真剣な話し合いを重ねたのだった。5分という時間が持つ重みや責任に、真っ向から対峙して。(先日、放送された番組を見たが、“ただの”母として生きる彼女の姿が、“誤解を招かない範囲”で丁寧に映し出されていたように思う。)

「アール・ブリュット」とは何か?
「“生の芸術”と訳される、フランスの芸術家ジャン・デュビュッフェが提唱した言葉」「美術の専門的な教育を受けていない人が、伝統や流行などに左右されずに自身の内側から湧きあがる衝動のまま表現した芸術」「美術史的な枠組みでは解釈し尽くすことができない、発表や評価を望まない自発的な表現」「 秘密・沈黙・孤独・独学」等々言われているが、これらをベースに「ART BRUT? NOT ART BRUT?」という問いを考えてみた時、少なくともスウィング「オレたちひょうげん族」の場合は違うんじゃないかなあと思う。美術の専門的な教育を受けていないのはそうらしいが、そんな言うほど衝動とか無さそうだし、思い切り発表を望んでいるし、賑やかだし、孤独じゃないし、別に何でも無くったっていいじゃないか、というのが「オレたちひょうげん族」を始動して以来、全く変わらない率直な気持ちである。そもそも福祉施設が「ソレが美術的に何なのか?」を決められる立場にあるのかという点についても甚だ疑わしい。一方、まさに全国各地、至るところで「アール・ブリュット」という言葉を冠した展覧会が続々と催されている様子を見ていると、強い意味性を伴う言葉を用いることへの責任感、そしてその言葉から漏れ落ちてしまうものや人への眼差しが、決定的に欠けているように感じる。「アール・ブリュット」というフンワリそれらしい、キャッチーな言葉が非常に有効!との判断なのだろうが、危ないなあ…と思う。




そして僕たちが最も懸念するのは、「アール・ブリュット」に牽引されるように「障害者アート」が隆盛するにつれ、“障害者=優れた芸術を生み出す人”といった新たなド偏見が顕出しつつあることだ。「障害者が描いた絵?やっぱりすごいわねえ…」と感嘆する声が聞こえる。「何が“やっぱり”やねん!」と出せる限りの大声でツッコミたいところだが、こうした感嘆の声を引き出し、障害のある人への偏見を強化してしまっているのは、他ならぬ僕たちなのではないか。またある人は言う。『「アート」に障害のあるなしは関係ないと思っていたが、「オレたちひょうげん族」の作品にはなぜか不思議な魅力を感じている。障害者といわれる方の作品には、何か特殊な力があるのだろうか?』…何ということだ!これは僕のおかんの言葉(フリーペーパー「Swinging Vol.18」掲載)ではないか!ああ、おかん!せっかく偏見持ってなかったのに!ああ、おかん!息子の仕事のせいで、息子がいちばん望んでないパターンにハマりつつあるやん!おかん…そうじゃないねん…。僕ら「ノーマライゼーション」どころか「アブノーマライゼーション」やってもうてるやん…。おかん…また今度ゆっくり話させて…。

僕たちにはもっともっともっともっと、丁寧さ ― ゆきちゃんがたった5分に費やした、あの丁寧さのような ― が必要なのかもしれない。終わらない試行錯誤を繰り返し、「オレたちひょうげん族」の旅は続く。

(展覧会「ART BRUT? NOT ART BRUT?」より)
| 考えごと | 14:11 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://garden.swing-npo.com/trackback/1400292
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< June 2018 >>
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
LINKS
PROFILE