2015.06.05 Friday
蘇るせぇるすまん
それぞれの自宅へと向かうスウィングの送迎車内。
小雨降りしきる車外を眺めながら、心細そうな声を出すのは、後部座席に座るはるかくんである。
「雨、やんでほしいなあ。お父さん、迎えに来てくれるかなあ。」
はるかくんは雨風が大の苦手である。
小雨だって、そよ風だって苦手なもんは苦手なんである。
「そうやなあ。やんだらええのになあ。でも雨降ってても、お父さん迎えに来てくれはるし、だいじょうぶ、だいじょうぶ。」
はるかくんの気持ちを少しでも和らげようと、ドライバーのスタッフ西川くんが優しく声をかける。
…そうこうするうち、2人の願いが天に届いたのか、本当に綺麗さっぱり雨があがる。これではるかくんもひと安心…の筈である。
「はるかくん、よかったなあ!雨やんだなあ!」
「えぇ!??(怒)」
なによ、それ…?
ビックリするやん…。
雨やんだんやし、ハッピーハッピーちゃうの…???
なんでそんなキツい感じで「えぇ!??」言われなあかんねん…。
「雨やんだら、お父さん迎えに来る?」
またワケのわからんことを…。
そりゃあ、迎えに来てくれへんやろ…。完全に分かってるくせに聞いてきてるやん…。
でも、まあ、きっとまだ不安なんだろう。落ち着いて、落ち着いて、優しく、優しく。
「いや、雨やんだし来はらへんのちゃうかなあ?」
「えぇ!??(怒)」
なに…?なに…?またそれ…!??
だからなんでそんな急にキツぅ言うの…?いややわあ…。
「なんでお父さん、来てくれへんの?」
「いや、だから雨もやんだし、風も強くないし、来ーへんのちゃうかなあ?分からへんけど…」
そう西川くんが言い終わるか終わらないうち、かぶせ気味にはるかくんの声が車内に響き渡る!!!
「そう!!!
アナタは何も分からない!!!」
……ええ???……ええ???
ちょっとしたパニックに陥りながら、思わずバックミラーを覗きこむ西川くん…。
そこには薄い笑みを浮かべながら、真っ直ぐに自分の方を指さす、はるかくんの姿があったのだった…。
木ノ戸