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【揺れるシセツチョー】「目に見えないモノ」だらけ

新しい家が欲しい/後藤実/2016

 

大型ショッピングモールに行く。滅多に行かないが、時々は行く。そこには楽しそうな表情を浮かべた人、明らかに苛立っている人、無表情に淡々としている人、本当にたくさんの人がいるが、僕は同時に「そこにいない人たち」について考えることがある。こんなにもたくさんの人が、今、当たり前のように目の前にいるが、この場所に来たくても来られない人はどのくらいいるのだろうか、あるいは存在さえ知らない人は一体どのくらいいるのだろうか、と。来れたら幸せ、来れなければ不幸せというのではない。ただ、賑やかに晴れやかに、まるでこの時代や社会を端的に象徴しているかのような大型ショッピングモールという景色の中で、「そこにいない人たち」に思いを馳せる時、世界が決して「目に見えるモノ」ばかりでできているのではないという単純な事実を、分かりやすく感じることができる。

 

いつの頃からか、月に1、2回、目の見えない人に鍼を打ってもらうことが習慣化している。お店に入って予め指名した人(当然「達人」を指名する)と「こんにちは」と出会う時、いつも僕の心は少しばかりほっとするのだが、それは恐らく、自分の姿を見られていないことに対する安堵感のようなものだと思う。そしてベッドに寝そべり、いざ施術がはじまると(もちろん目で見られているわけではないのだが)、今度は自分の身体の奥深くまで、優しく丁寧に見られていることの心地良さを感じはじめる。誰かが「怖い! 鍼は目の見える人に打ってほしい!」と言ったのには笑ったが、なるほど、まあ分かるような気もする。けれど、この安堵感や心地良さの正体は一体なんなのだろう。

 

先日訪れた京都の北部の方(つまり田舎の方)のある温泉には「浴室内で喫煙しないこと、発見したら即出入禁止」といった旨の貼り紙がはられていた。浴室内で喫煙する人がいるのか!? …というシンプルな驚きと、そりゃ最低限のマナーは守らなあかんよなという思いとともに、1回失敗! 即退場! という寛容さに欠ける風潮が、社会の隅々にまで浸透しているのを目の当たりにしたようで、なんだか暗澹たる思いに包まれた。映画館に行くと、あれも禁止! これも禁止! のオンパレードが続く。やはりマナーは大切だと思うけれど、前の席を蹴ってしまったなら「あ、すみません」でいいのではないのだろうか。誰かによって都合よく作られた「べき」やら「ねば」やらおせっかいに囚われ、思考が、身体が、行動が萎縮してゆく。何かもっと大切なことがなおざりにされているような気がする。

 

ある時、スウィングのある人の危機的な状況について、また別のある人がこう言った。この状況はピンチではなくチャンスなんだと。それもその人固有の問題ではなく、スウィング全体がより良くなるチャンスなんだと。皆が皆じゃないにしても、こうした発想が「誰か」から生まれるこのスウィングという場を、僕は誇らしい! 素晴らしい! と素直に感じた。個の問題を個の内に留めず、もっと全体をいい感じにしようぜ! という捉え方は、僕が考える「アート」にとても似ている。私的な(そして多くの場合、非常に切実な)問題や美意識なりを、「普遍性」「全体性」を有するものに高めること、その過程にこそ「アート」は在るのではないか、あるいはそうした過程をこそ「アート」と呼ぶのではないか、そんな風に考えている。もちろん作品としての「アート」があることは確かだが、過程無くしてしそれが生まれ出ることはない。卵が先か? ニワトリが先か? の話に似ているけれど、僕としては作品としての「アート」(=ニワトリ)が成立するまでの過程に宿る、目に見えない「アート」(=卵)の方に興味がある…というか日々魅力を感じ続けている。

 

この世界で生きてゆくことは、多くの「目に見えないモノ」によって支えられ、時には阻害されている。「縁」とか「運」とか、年を取った人たちはさらっと何気なく言うけれど(…偏見だろうか?)、それらは本来さらっと言えてしまうくらい、当たり前に大事なことなのだと思う。北野武監督・映画「座頭市」は小石につまずいて転んだ座頭市の「いくらめいっぱい目をおっぴろげても、見えないもんは見えないんだよなぁ」というセリフで締め括られる。映画を観た当時はこのセリフ要らん! と残念に思ったものだが、今この歳になってようやく、このラストの意味が我が身を通して少し分かる気がする。

(フリーペーパー「Swinging Vol.22」より転載) 

 

文:木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

NPO法人スウィング理事長。立命館大学文学部日本文学専攻卒。NPO、演劇、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑えるよ」という友人の勧めで障害のある人に関わる仕事に就く。2006年にNPO法人スウィングを立ち上げ、「障害福祉」の枠を超えた創造的な取り組みを通して、社会を変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。

 

※ フリーペーパー「Swinging」は、スウィング賛助会員の皆さまからの会費を原資に制作・発行を行っております。→
※ 全国津々浦々「お!それウチに合うよ!置くよ!」という店舗さま等いらっしゃいましたら、スウィングまでご連絡ください!(10部〜20部程度)
※ 全国津々浦々「お!あの店に置いたらええんちゃうん?」的な情報がございましたら、スウィングまでご連絡ください! → Tel:075-712-7930 → Mail:swing.npo@gaia.eonet.ne.jp(木ノ戸)
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※ 次号「Swinging Vol.23」は2017年12月1日…はムリなんで12月中旬発行の予定です!

| フリーペーパー「Swinging」掲載! | 17:04 | comments(0) | trackbacks(0)
【クソ真面目エッセイ-14】スウィングここがオモシロイ!!

 

わたしから見たスウィングは、とにかくオモシロイ。そして、楽しい。もう、毎日通いたくなる。そして、みーんなちがうし、楽しい絵とか、話とか。とにかくオモシロイ!! もう、だれかと話すたびに笑っちゃうし…だって、木ノ戸さんなんか、行くたびにオモシロイことしてたり、なんかくれたり、そのくり返し。だから、みーんな大好き♡また夏休み、ぜったいスウィングかけつける。みんなと絵をかいたり遊んだり。とくにミサさん!! わたしのことプニプニするんやもん! あとゴミブルー、もうゴミコロリしているときなんかめっちゃめっちゃ楽しいんやもん!! だから、ウレシイ。みんなが、私と遊んだりしてくれるから。だって、けっこう何でもしゃべるから、それを聞いたりしてくれて。だからウレシイ。でも、昔、私のことを知らない人だけだし、なんかこわかったけど、一人一人の事を知って、みんなわたしのことを知ってくれて、だからこそ、みんなとしゃべったりできる。だからこそ、スウィングがオモシロイ!! みんなで、遊んだりオモシロイことして仲良くなったから、もっともっとオモシロクなっていった。きっとこれからもっともっとオモシロクなると思う。

 

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正直このラブレターに何を付け加えても野暮だなぁと気が進まないのですが、野暮ついでに馴れ初めを。

私たち家族は上賀茂住人で、スウィングさんとはご近所。スウィングさんの活動についてはお腹を抱えて笑えるブログで密かに知っていたのですが、実際にお付き合いさせて頂くようになったきっかけは町内の地蔵盆でした。一昨年地蔵盆の運営をする役員になった私は、スウィングさんに子どもたちのためのワークショップを地蔵盆でして頂けないかとお願いしました。とてもありがたいことにスウィングさんは快く引き受けて下さって、愉快なワークショップ「バッジ・グー!」で子どもたちを楽しませてくれました。やんちゃ男子たちを増田さんが一手に引き受けてくれていた様子、いまだに忘れられません…。

その後も「ゴミコロリ」に参加させてもらったりする内に、ムスメはスウィングのみなさんと「仲良く」なっていきました。放課後「ちょっとスウィング行ってくるわ!」と宿題を持って行きかけた時には、「ちょっと、ちょっと!! スウィングさんお友達の家とちゃうし!」と引きとめたこともありましたが、「どうぞどうぞ」と懐の深いスウィングさん…夏休みなど長期のお休みの時には、お友達と一緒に何度も遊びに行かせてもらいました。「沼田さん、計算できんのやで!」とか、「XLさんて、誰も呼んでない。みんな、はっとりさんって言ってる」とか小ネタ満載で帰ってくるので、スウィングファンのワタクシも大喜び…じゃなくて、本当にみなさんから可愛がってもらって楽しい時間を過ごしているんだなぁということが毎回ムスメのおしゃべりから伝わってくるので、ありがたいなぁとしみじみ思うのです。

極めつけは、この1月。ムスメは習っているクラシックバレエの発表会を迎えました。スウィング以外でも交流のあるかめちゃんに「来てね〜♡」とプログラムを渡したのですが…なんと当日スウィングのみなさんおよそ10人ほどの方が、発表会を見に来て下さったのです。スウィングオールスターズを前にクラクラ…ムスメの手前大きな声じゃ言えませんが、いやでも言っちゃいますけど、正直「よその子のためにそんなにまでしてもらって…ありがたい(涙)」とその時は思いました。

でも、「ありがたい」という気持ちはそのままですが、ムスメが原稿依頼を受けて勢いよく5分くらいで書いた上記文章を読んで、「あっ、そっか。みんなとは仲良しなんだもんね。よその子、ちゃうね」と反省。うち、とか、よそ、とか関係なく、ムスメにとっては「一人一人の事を知って、みんなわたしのことを知ってくれ」て仲良くなった人たち。「来てくれてありがとう!」で、それ以上でも、それ以下でもないんだ。

つい「うち」「よそ」というような境界線を引っぱってしまう私を尻目に、そんなことを軽々と超えて「遊んだりオモシロイことして」仲良くなっていくムスメ。それを「まぶしいなぁ」なんて眺めているから、私はまだ「ファン」どまりなんですね。

(フリーペーパー「Swinging Vol.22」より転載) 

 

文:西尾詩(にしお・うた)

小学5年生の女の子。和風ハンバーグが好き。カボチャとマメとトマトが大の苦手。

 

文:西尾美里(にしお・みさと)

京都上賀茂で「梟文庫」という小さい図書館を運営しています。「Swingy days」も、「Swinging」バックナンバーもありますよー。

https://www.fukuroubunko.com/

 

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【クソ真面目エッセイ-13】妹

 

東京の吉祥寺で、障害者施設で作られる雑貨ばかりを専門に日本全国から集めて販売する「マジェルカ」というショップを営んで今年で6年になろうとしています。その活動の中で感じる様々を、不定期ですが普段からブログとしても書きつらねているので正直ネタ切れ気味で、今回SWINGさんからこのコラムのお話を頂いてから、今さら何を書こうかとても迷ってしまいました。聞けばテーマはなんでもOKといの事なので、それなら私的に過ぎて自分のブログではあまり書かない、というか書きにくい事でも書いてみようかなと。

 

障害者の作る商品を販売しているというといかにも人が良さげで意識の高い人物を想像されてしまうようで、それが実際に会ってみると正反対の下衆っぷりにがっかりされてしまう事も多い私なのですが、事実この商いを始めるにあたっての動機も、障害者福祉の抱える課題を解決したいぜ! エイエイオー! といった火傷しそうな熱い思いからではありません。今でこそあちこちで目にする機会が増えたけれど、当時はまだほとんど誰にも知られていないお宝を発見したという事に強く興奮をおぼえてマジェルカを始めました。とはいえ、さすがにそれだけではなく、自分の妹に障害があるという事もこの障害者の世界に関心を持つ理由の一つとしてあったと考えています。ただ、だから何故? と問われるとはっきりとはいえないのだけれどやっぱり影響はあったのだと思う。妹が障害者手帳を取得したのは大人になってからで、障害があるのか無いのか判断が微妙な、いわゆるボーダーといわれるタイプでした。そんな妹と家族の中では私がおそらく一番身近な立場で暮らしていたと思います。昔は「知恵遅れ」なんて言葉もあって、親から「彼女は知恵遅れだからしょうがない」なんて言葉を事あるごとに聞きながら私は育ってきました。「だからあなたが助けてあげてね」とも。

 

靴の左右を履き違えるなんていうのはざらで、集団登校の時には周りの子供たちにからかわれながら一緒にいる自分がよく履き替えさせたりしていました。特殊学級ではなく通常学級に通っていた事もあるのでしょう、学校ではいつもいじめられたりからかわれたりしていて、時には私が妹のクラスに仕返しに行くような事も。そんな私もだんだん成長するにつれ、いつも周りに笑われる彼女の事が恥ずかしい存在に感じられてきて、履き違えた靴をイライラしながら乱暴に直したり、いじめられていても見ないふりをするようにしたり、無邪気につないできた手を振り払ったりするように。今思えば彼女に対してというより「俺はコイツとは違うんだ!」という周りへのアピールだったのかもしれません。同時に家の中でも色んな事ができない、なんとかさせようと教えても理解ができない彼女に対して腹を立てる事も多くなり、時にはひどい言葉を投げつける事も。 そんな時の彼女はいつも悲しそうな情けなさそうな複雑な表情をしていたものです。本人にそれとはっきり聞いた事はないし、きっと自分でそうと理解をしているわけではないと思うのですが、そんな悲しかったり情けなかったりする気持ちというのは相手の私たちに対してではなく、できない自分に対して持ってしまうのだろうなと。

 

そんな表情と同時にうす笑いを浮かべる事もよくありました。それはきっとそれ以上目の前の相手を怒らせないようにしていたのでしょう。自分が何故怒られるかもよく分からないままに、どうしたら怒りを納める事ができるのかが分からないままに身につけたのでしょうか。私にとってそんな時はいつも後味悪く、思えば私自身も彼女のそんな感情を本当は分かっていたのだと思います。

 

罪深いと思うのです。元々持ち前の無邪気さで繋いできた手を振り払い続けるうちに、手を差し出す事をやめ、相手の目をうかがう事ばかりさせるようにしてしまった。何が罪深いかって、一体何が悪いのか自分でもよく分かっていない、それが分かれば納得もできるだろうけれど、それどころかなぜ怒られるのか理解さえよくできないのにただ相手が怒っているからと卑屈にふるまわせるなんて。相手のその怒りがいつも正しいとは限らないのに。

 

いつからかその罪を少しずつ返していくようにしてはいるつもりですが、まだまだ先は長いようです。彼女は別にそれを望んでいるわけではない、というかこんな事自体別に気に留めてはいないかもしれないけれど(笑)

(フリーペーパー「Swinging Vol.22」より転載) 

 

文:藤本光浩(ふじもと・みつひろ)

2011年に日本全国の障害者施設で作られる雑貨のセレクトショップ「マジェルカ」を立ち上げ、現在は東京の吉祥寺で運営し、売り手の立場から福祉事業所の現場とお客様をつなげる役割を実践。

http://www.majerca.com/

 

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| フリーペーパー「Swinging」掲載! | 14:12 | comments(0) | trackbacks(0)
【特集】精神科医×芸大教授×ドシロウト 〜「身体性」と「目に見えないモノ」〜

 

「心」ばかりを大事にしちゃって、「身体(カラダ)」をないがしろにし過ぎてるんじゃないか? 

「目に見えるモノ」ばかりを信じちゃって、「目に見えないモノ」をおろそかにし過ぎてるんじゃないか? 

「物」はたくさんあっても、どうにもこうにも息苦しいこの世の中。

「心」や「目に見えるモノ」ばかりに振り回されるのはもうイヤイヤ! 

「身体」ももっと大事にしたいの! 「目に見えないモノ」ももっと大事にしたいの!!

 

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蓑島豪智(みのしま・たけとも)

いわくら病院院長、WRAPファシリテーター。1968年生。1994年京都大学卒業、1998年京都大学大学院退学。おもしろそうだなと大卒後すぐに飛び込んだ脳科学研究の道。うまくいかず元々目指していた医者になると決め、悩んだ末選んだのが精神科。理詰めで進路を考えたけど、最後は感覚的に決めた。脳という切り口から入った臨床の世界。今はそれも大切だけど、病院への入院中心から地域生活中心に改革を遂げたイタリアに触れて人間くさいことの大切さに目を開かれ、病気があっても当たり前に地域で暮らすこと、病気があって凝縮して滲み出てくるその人らしさに心打たれながら、まだまだ入院医療の占める割合の多い日本の精神科医療のあり方を何とかしたくて精神科病院の現場にいます。

 

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水野哲雄(みずの・てつお)

京都造形芸術大学名誉教授。1948年生。1972年京都工芸繊維大学大学院修了。ヴィジュアルコミュニケーションデザインからビデオアートを展開。1978年から京都芸術短期大学ビジュアルデザインコースの教員となり、映像コース、京都造形芸術大学情報デザイン学科、2003年〜2006年芸術基礎教育センターを経て、2007年に新設されたこども芸術学科で教鞭をとる。2014年に同校を退職後、名誉教授となる。芸術基礎、ベイシックデザインを専門とし、アートやデザインが社会課題を解決することを希望に活動している。「こども」と「アート」の視点で生き方を捉え返すアートと福祉の交差点、アトリエ「み塾」、生活ゴミの資源化を基にエコライフの愉しさを実践する場、「暮らし工房」を主宰し追求中。

 

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木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

NPO法人スウィング理事長。1977年生。立命館大学文学部日本文学専攻卒。NPO、演劇、祇園のスナック、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑えるよ」という友人の勧めで障害のある人に関わる仕事に就く。2006年、NPO法人スウィングを設立。人の「働き」を「人や社会に働きかけること」と定義し、芸術創作活動「オレたちひょうげん族」、清掃活動「ゴミコロリ」、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」等々の活動をプロデュース、障害の有無や対価の有無をとっぱらった「NPO」(=市民団体)、「一市民」としての創造的な取り組みや発信を通して、社会をオモシロく変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。黄色が好き。でも青も好き。ちなみにホントは赤も好き。

 

 

「縁」に導かれて♡

木ノ戸:昨年の年明けぐらいから僕自身、調子が悪いというよりも、すごく内面に深く潜りこんでいくような時期があったんです。それはまぁ、しんどかったですし病名が付くような状態だったかもしれないけど、自分としては病気ではなくって、自分にとって必要な作業をしていると感じてたんですね。で、最終的に得た答えみたいなものを「身体性」と「目に見えないモノ」っていう言葉で表現しはじめたんですよ。

水野:なるほど。分かる、分かる。

木ノ戸:「目に見えないモノ」のひとつとして「縁」というものも思ってるんですが、今回このテーマでゆこう! と決めたとたんに、ドンピシャのタイミングで水野先生の「身体性」に関するテキストが目に飛びこんできたんです。偶然と言っても必然と言ってもいいんですけど、内容にもものすごく共感しまくって、「縁」だなあと。

水野:ありがとうございます(笑)。

木ノ戸:蓑島先生からも同じようなタイミングである研修会の案内メールをいただいたんです。「うわ! 来た!」って思って。その研修会自体も素晴らしかったんですけど、もう「来た!」と思ったんですね。そんなにしょっちゅうメールを交わすほど仲良くはない。でも、お互いすごく好き合ってると僕は思ってるんですけど(笑)。で、先生はこの座談会の参加を迷われたみたいなんですけど、最終的には「何かのご縁だから」という言い方をしてくれたんです。

水野:「岩倉」[1] という地は聞きかじりですけど、非常に高貴な方がちょっとおかしくなって、で、お隠れになるというか、井戸かなんかの水を飲んで良くなったと。そういう謂れがやっぱりもともとなんですか?

蓑島:史実として、文書レベルで残っているものはあるみたいです。

木ノ戸:僕は中学校の教科書で「岩倉」を習いました。やっぱり日本の精神保健医療、発祥の地で間違いないんですかね?

蓑島:まぁ、いくつかあるんですけど、そのうちのひとつということですよね。

水野:蓑島先生は患者になったことはあるんですか?

蓑島:僕は医療機関にはかかりませんでしたけど、でも大学院生の時に一時「鬱」でした。

水野:みんなあるような気がするんですけど。僕は入院まではいかなかったんですけど、一応通院で薬を4年ほど飲まされましたね。あまり飲まなかったんですけどね、アルコールは飲んでましたけど(笑)。

全員:(笑)

 

[1]京都府京都市左京区南部に位置する地域。

 

肥大化する「視覚」

水野:「身体性」って身体をどう見るかによるよね。「心身」って言うじゃないですか、「心」と「身」。その「心身」というのを分けるんじゃなくて、どう繋がっているのか、どう関わり合っているのかというところに興味はありますね。

木ノ戸:昨年の11月に「アートミーツケア学会」[2] の札幌大会に参加させてもらったんです。そこで、ある講師のお坊さんと個人的に話す機会があったんですが、ものすごく興味深い話をささっとしてくれて。お経も元々は身体が先なんやと。身体から立ち上がったものを言葉として表したものであって、言葉が先じゃないんだという話で「あぁ、なるほどな」と思ったんですね。

水野:美術でもそう言うからね。絵を描く時にまず身体で描きやって。絵はテクニックで描けるもんじゃない。身体が何か感じたり思ったりしてるからキャンバスに投影できるんですよね。ある時、大学の山で木を一生懸命描いてる子がいて「木の根っ子のグ〜ッ! と立ち上がっている感じをどうしたら上手く描けるんですか?」って聞いてきたから「抱いてみ」って言ったの。素直な子やったから木に抱きついて、そしたら「何か分かるような気がしました、ありがとうございます」って。

木ノ戸:もっと五感ですよね。みんな同じぐらい大事なはずなのに、目からの情報にすごく今、囚われてるような気がします。情報の80%だか90%が視覚からって言いますけど、もともと目ってここまで大事だったのか? って疑問に思います。

水野:特にビジュアルの世界は道具がどんどん進化していって、どんどんメディアが発達していって、「こんなことができたらなあ」が身体を使わなくても何でもできちゃうようになった。すごく視覚が肥大化してイマジネーションの世界が簡単にリアルにできるようになって。頭でっかち、イメージでっかちになるね。そうなってくるとやっぱり身体は正直なもんで、疲れちゃうっていうかついてゆけなくなっちゃう。

木ノ戸:身体的に何も感じるものがないし、イマジネーションがイマジネーションじゃなくなりますよね。

水野:そう。何でもできちゃうと人間すぐ慣れちゃうからね。

木ノ戸:メガネを外すとぼやけますよね。視覚情報が鈍ってすごく楽なんです。スウィングの朝礼や終礼はいつも大体20人ぐらいでやってるんですけど、ある時、10人ぐらいやったんですよ。その楽さがすごかった。同じ空間にいる人数が少ないことのリラックス感をすごく感じたんです。いつもは喋らない人がすごくいい表情をして喋ったりとか。

水野:それと似たような経験、僕もあるんですよ。教師という立場にあったからやっぱり30人、50人を前に喋る。どうやったらいいんだろうと分からなくなって、そんな時にある人が「目の合う子に話しかけな」って。そうすると2人のその関係が広がるんだよね。たくさんいようが一対一の関係でいいと思えたからそれで救われた。蓑島先生はどうですか? 基本的に患者さんとは一対一という状況ですよね? 

蓑島:う〜ん。

木ノ戸:先生、言葉選ばないで下さいよ。ちゃんと原稿見せますんで。ダメなものは後でちゃんと消しますんで(笑)。先生がスウィングに来てくださった時、「やっぱり現場の人には敵わない」って言ってくださったんですね。覚えてはりますか?

蓑島:言いました?

全員:(笑)

木ノ戸:言ったやん!

水野:それはどういう意味やったんですかね?

木ノ戸:どういう意味やったんですか? 覚えてないでしょうけど。

全員:(笑)

蓑島:僕の中で「そもそも何で病気になるのか?」っていうところが引っかかっていて。最終的には病気と呼ばれるしかないものにたどり着いちゃうと思うんですけど、でもそこに至る過程は当たり前の悩みだったりとか苦しみだったりとか、そういう段階があるような気がしているんです。でも、医療という現場にたどり着かれるにあたっては、それこそ病気としか呼べないような何かを携えて来られることになるから、普通に症状が拾われて、それをもとに「病名はこうです、だから治療はこうです」みたいな流れになっていくと思うんですね。それはそれで必要だとは思うんですけど、ただそれで「病気を減らしたい」とか、「治したら終わり」とかではないような気がしていて。やっぱりその人の生活とか文脈に根差したものが、そういうやり方だと置き去りにされちゃう。そうなるとまた同じようなことが繰り返されるだろうし、そうじゃなくても、その人のことなのに何か医療の問題みたいになって、変なことが起こっているような気がしています。

木ノ戸:病気ってお医者さんが病気って言ったら病気になるじゃないですか? お医者さんが病気扱いしなければ病気じゃないんでしょうか?

蓑島:そこが本当に難しいなと思っています。やっぱり相対的なものだろうなと思っていて。ある一線越えちゃうとやっぱり病気としか言えないようなところもあるかな。

木ノ戸:でも、それを許容できる社会であれば、病気にはならないということですよね?

蓑島:そうです。最先端の薬や医療が使える国よりも素朴な国のほうが予後が良いという研究もありますね。それはそうだろうなと思います。単純に病気として切り取られて治すべき対象として扱われて「どの薬が当てはまるか」「薬がダメなら電気ショック」とか次々にいろいろな「治療法」というものが当てはめられていく世界と、「ちょっと変わってるけどそれもいいよね」と受け入れられる世界にいるというのとでは全然違いますよね。

 

[2]人間の生命やケアにおけるアートの役割を研究する場として、またアートの力を社会にいかしていくためのネットワークとして2006年に設立。

 

「心」はどこにあるのか?

木ノ戸:僕はスウィングをはじめて半年ぐらい経った時に急に発作に見舞われて、いわゆるパニック発作やったんですね。あれは発作が来るかも分からない…という予期不安、それが発作を起こすらしいんです。

水野:地震みたいなもんやな。

木ノ戸:で、恐らく5年ぐらい服薬もしたんですけど、ある時から積極的に発作を呼びこむようにしたんです。

蓑島:すごい。

木ノ戸:例えば車を運転しながら「来いっ! 来いっ!」って具体的に言ってたんですよ。歌とかも歌ったりして。

水野:どうなったん?

木ノ戸:そしたら来ないんですよ。発作を歓迎しよう! とシフトチェンジしたら起こらないんですよ、全然。

蓑島:そういうのはね、森田療法[3]の中で「恐怖突入」っていうものがあって、苦手な場面に対してどんどん身を置いていくっていう。あとは認知行動療法[4]によって苦手な場面に身をさらしながら、その状況に慣れていくみたいなところなんですけど。

水野:「プレッシャーを楽しむ」みたいなことかな。

木ノ戸:どうせ起こるものであれば、こちらから歓迎しよう! という開き直りですね(笑)。身体的に声を出して脳が生み出す不安へ反攻するという。僕はそういう経験もあって脳じゃなくって身体が先なんちゃうかなって思うんです。脳が大活躍しすぎ! って。

水野:どうですか、蓑島先生?

蓑島:今の精神医学はやっぱり心は脳の中にあるって仮説して、分かる範囲を突き詰め尽くそうとしているように見えるんですけどね。僕もそうできたらいいだろうなあと思ってたんです。もともと精神科やる前には高次脳の働きに単純に興味があって、脳科学をやってる大学院に入ってたんです。その中でいろいろなことが分かってくる状況を見ながら、そういうことの延長でいつか説明がつく時代がくるかもしれないなと思ってたんです。だけど実際に医者をはじめたら、そんな簡単なことではないなって思うようになったのは実感しますね。

水野:脳は単なるスイッチだと思うんですよ。感じた情報をフィルターにかけるわけでしょ、役に立つとか立たないとか。今、僕3歳児と付き合ってるんですけど、4月、5月は宇宙人ですよね。9月、10月になると一応人間っぽいコミュニケーションが成り立って、2月、3月になるとすっかり地球人って感じになる。植物でもそうだと思うんですよ。種飛ばして、そこに根付いて、根を張って、頭を出して。温度とか水とかそこの環境に順応して、対応できたものが育つんですけどね。子どもも同じでさ、実生の芽吹いてくる在り様が見えてくる。

蓑島:僕、悩んだりすると、とことん悩んで閉じこもって動かなくなるんですけど、悩みが底尽きると動きたくなるんですよね。若い時だったら走りはじめたりしてその中で何か言葉が戻ってくるというか。ついこないだで言うと経験したことのない物凄い痛みに襲われて本当につらくって病院に行ってみたけど何も見つからなくって。でもある時、自分が言い出した仕事がいくつかあって、それが一通り終わった瞬間にパッ! と悩まされていた痛みが消え去って「なんやストレスやったんか」みたいな。

木ノ戸:身体は先に気づいてるわけですよね。

蓑島:そうですね。

木ノ戸:その感覚が大事なんじゃないかなと思うんですけれども。でも脳が作った「気持ちらしきもの」が優先されて、痛みとか身体の声がなかなか大事にできない。

蓑島:ある方から「身体全体の細胞が喜ぶことを大切に生きていく」という話を聞いて、そうだなと思って。身体は知っているのに頭が働いていろいろ理屈つけて抑えられてしまっているんですよね。身体の細胞が喜ぶことに向かっていくとたくさん困難もあるけど、自分なりに努力してベストを尽くす。その積み重ねの中で次々に扉が開きはじめて必要な人が集まったりとかお金が集まったりして目標が形になっていく。そういうもんじゃないのかって話してくれて、本当にそうだなと思いました。

木ノ戸:いろんな邪魔なものを取っ払って本当に自分が進みたい方向に進んでいくということを重ねていけば、道は開けていくと思うんです。スウィングを作るにしても、何の裏付けもなければ計画性もほとんどなかったです(笑)。

水野:でも、それって創作のプロセスとよく似てるよ。最初から最終形態のイメージがあるわけじゃなくて、何となくぼや〜っとしたものはあるけどね。やって、いじってる過程でだんだん「これが作りたかったのか」と逆に素材などから教えられる。だから創作の過程というのは作業じゃないんですよね。設計図があってそれに従ってやるのではなく即興と一緒です。最後どうなるんだろう? こっちのほうが面白いかな? とかやりながら、設計図も書きながらみたいな。そうしていい作品ができた時は自分にすごく発見がある時。

蓑島:それって理詰めの研究でもそういうものなんだなと感じさせてもらっていて。実験する時もある程度「こんなこと試したらこんなことが起こるんじゃないか?」と想定してやるんですが、その通りのことが起こってもそれは大した研究じゃないんですよね。いい研究というのは想定したことから外れたことが出てきた時。出てきたことにちゃんと目を開いて何があるのかを見て気づけた時に大転換が起こって、これまで想定もしてなかった面白いことが出てくる。

木ノ戸:「こうなるに違いない」という確定的な仮定を持ってはじめたことって、その仮定に沿って動いていく気がするんです。実際に動いているのか、そう見えるだけなのか分からないですけど。

蓑島:何か降ってくる気がするんです。本当の意味で震えるようなことって降って来るような気がする。あまり自分の考えの範囲の中でやっていることって驚きも少ないし、喜びも少ない。思っていること、言いたいことがあるから投げかけてみるんだけど、その結果、想定外のことが起こって一時的に批判があっても、そこを乗り越えてやっていくと「化ける」というか。やっぱりそういう掛け合いの向こうに面白いことが転がっていると思う。

 

[3]精神医学者・森田正馬(もりた・まさたけ)によって創始された精神療法。対人恐怖や広場恐怖などの恐怖症、強迫神経症、不安神経症、心気症などが主たる治療の対象とされる。 [4]「認知」(現実の受け取り方やものの見方)を修正することで、気分や行動を変化させようという治療法。

 

話し言葉 vs. 書き言葉

木ノ戸:言葉が目に見えるものか、見えないものかっていうのもすごく難しい問題だと思うんです。話し言葉って耳から入ってくるけど、その点、書き言葉は目に見えて残ります。蓑島先生は患者さんと対面する時に話しながらカルテに書くわけですよね? 何か切り分けがあるんですか?

蓑島:僕は医学教育的には悪い書き方をしてると思うんですけど。聞いたまんまに書いていくんです。たぶんそれは僕の特性で、音で聴いたことを途中まで本当にできるだけそのままにカルテの中に収めていくんですね。でもそれは、その人の「声」を聴くステップのような気がしていて、聴こえてきたら突然やめてる自分がいるんです。向き合って入っていくまでの準備段階みたいな感じでいますね。

木ノ戸:カルテとして成立しないんじゃないですか? 途中までは書いてって(笑)。

蓑島:そうですね、途中からスタンスが変わっちゃってるので(笑)。ただ、そうやってその人の状況や今が語り出されて紙に紡ぎあげられていく中で、何となく「そうなのか」みたいなのが自分の中に芽生えてくると、そこでちょっとやり取りをはじめたりして。そんな感じかなと思います。

木ノ戸:話し言葉は耳から入ってくる分、自分の都合のいいように解釈したり、あるいは都合の悪いように解釈してしまう可能性がありますよね。

水野:その時にね、僕は「声」だと思うんですよ。言葉じゃなくてね。言葉というのは意味が含まれてくるでしょ。そうじゃなくて、ただ発語するというか。乳幼児の「声」はまだ言葉になってないけど、何かすごく分かる。

木ノ戸:政治家の発言が信じられないとか、そういうことですよね。

全員:(笑)

木ノ戸:いくらいいこと言っても、こいつは嘘ついてるっていうのがバレちゃう(笑)。

水野:そう、そう、そう。

木ノ戸:言葉以前に何かがあるという。

水野:思いなり、発する何かね。「聞いて!」ということなのかもしれませんけどね。

木ノ戸:書き言葉はもう揺るぎようがないじゃないですか、だって書かれてるし消えないものですから。それをどう解釈するかは、見た人がどうかってのはありますけど、話し言葉ほど自由じゃないですよね。

水野:手書きって大事ですよね。でも意外と書き文字もね、違うんですよね。字の形が委縮してるなとか、体裁ぶってるなとか、そういうこと気にせず気持ちがガーッ! と出てるなとか。

蓑島:僕、たぶん話し言葉なのか、書き言葉なのかがポイントじゃないような気がしていて。話し言葉であろうと書き言葉であろうと、行ったり来たりが必要ってことじゃないんですかね。そこがないと一方的になって、こちらの思いとかの文脈の中での理解になっちゃって。

木ノ戸:書くという行為はフィジカルな行為ですよね、そのフィジカルな行為に至るまでの間にワンクッションというか、言葉を選ぶと思うんです。ある程度整理して、どう伝えたらいいのかってことを考える。僕らのいる業界は特に…かも分からないですけど、言葉で話してるけど伝わってないことって本当に多いんですよ。伝えられる側も分かってないのに「うん、うん」って聞いちゃうんです。

水野:でもね、本当に思いがあって言わずにいられない時って、雄弁になるっていうか伝わるよ。ビヤ〜ン!って。

木ノ戸:それはもう、ちゃんと「声」になってますよね。

水野:「身体性」があるわけか。

木ノ戸:「身体性」のある言葉は人に訴える力があるし、そうじゃない言葉って響かないと思うんです。

蓑島:僕、声ちっちゃいってよく言われるんですけど、でも本当に言いたいことが溜まってきて言う時って、何か自分でも「声」が出てるなって感じるんです。

水野:僕なんか中学の頃、よくクラスで意見とか言うじゃないですか、ミーティングとか。あの時に何か「これ言わなくちゃ」って思うと、胸がドキドキして言えなくなるんですよね。手が上げられなくなるんですよ。「好きです」って言う時でも言えないでしょ、ドキドキして(笑)。

木ノ戸:その時に「好きですって言えない」って言えたらいいですよね(笑)。それが身体の「声」やと思うし。

全員:(笑)

水野:それ言えたら楽だね。そういう発想なかったな。

木ノ戸:例えば、慣用句にも身体がよく出てきますよね。「胸が痛む」とか「目から鱗」とか「肌が合う」とか。僕たちは何気なく理解して使ってるけど、こういう言葉って身体感覚を大事にしているからこそ生まれた言葉なんだと思うんです。

水野:そうですね。

木ノ戸:そして実際、「肌が合う」という身体的な快、不快を出発点にしているからこそ、言葉としての強度を持つんじゃないかと。「同じ匂いがする」とかも、ただの表現としてではなく、実際自分と同じ匂いを身体的に感じたんじゃないかと思うんです。

 

脳のアンバランスと「人」

木ノ戸:僕の中での「目に見えないモノ」の中には「自然」があります。最近やたらと「自然」に足が向きはじめたんですが、例えばさっきまでささくれ立っていた気持ちがちょっとドライブして「自然」に入っていくと、それがもう大転換したりしている。自分の脳がこしらえたものなんて大してあてにならないなあと思いますし、何かもっとこう、大きなものに生かされていることを実感します。「自然」というのは木であるとか川であるとかそれ自体は見えるけれど、そこから受け取るものは目に見えない。

水野:「現象」ですね、それはきっと。「自然」の表れというか。僕の漠然としたイメージでは自分の存在というものは意識している自我の領分とそれ以外の部分があって、その2つの潮の満ち引きのようなもの。自己を主張すればするほど自然的なものが後退していって、逆に自分を空っぽにしていくと「自然」が向こうからやってくる。キャッチボールというか、どちらかだけでは嫌なんだよね。その動き、ダイナミズムが面白いと感じる。

蓑島:さっきの脳の話でも思ったんですけど、木ノ戸さんが言っている脳って高次脳機能だと思うんですよ。ものすごく進んだところの脳の話。

木ノ戸:そうかもしれないです。

蓑島:脳って本来「本能」の部分も扱っているわけで、今はそこの中でアンバランスが起こっていて、脳の中で活躍しているところが限局しているんですね、このあたり(おでこのあたり)に。

木ノ戸:それは臨床の場で実感されますか? いわゆる精神疾患の人って増えてるんですか?

蓑島:話の最初の方に出ましたけど「岩倉」って精神医療領域のレッテルがあって、誰でもかれでも気軽に受診していただけるっていう環境にはなっていないと思います。町のクリニックとはちょっと違うんですね。でもそういう限られたフィルターを通してでも入院されてくる方は変わってきてるんですよね。前だったらはっきりと「鬱病」とか「統合失調症」というような人が多かったはずなんだけど、同じ病名が付いていてもその色合いは変わってきていると思います。そういう意味で言うと裾野は広がってきていると思います。

木ノ戸:なぜ裾野が広がってきたんでしょうか? ある人が「今の時代、精神科を受診すれば誰でも必ず病名がつく」って言ってたんですね。ちょっと「不安なんです」「悩みがあるんです」とか言えばすぐ病名がつくと。そういう「ハードルの甘さ」なのか、そもそも社会の許容値が狭まったのか、どんな感じがしていますか?

蓑島:下世話な話で申し訳ないですけど、今の病院のシステムだと病名がつかないと医療機関で料金が発生しないんです。めちゃめちゃ効率的にやると「睡眠について問題があるか?」「気分について問題があるか?」ポンポン聞いていって、それに当てはまる病名を付けられないわけではないんです。

木ノ戸:ただ問題や課題を抽出するのは楽ですよね。そういうものばかり取り出す風潮って何でしょうか?

蓑島:目の前にいるのは「人」なのにも関わらず、どこか「物」扱いというか。人と人として向き合うとなるとエネルギーもいるし、出されたものに対して反応する自分も出てくるし、その掛け合いの中でややこしいことになる場合もあるわけです。でも、そういうことの向こうに表れてくるのが「人」であるのに、「なまもの」としての扱いが削がれていって「物」みたいな扱いになってしまうというか。それで済んでいくこともあるから、そういうアプローチも否定ばかりはできないですが、いつまでも大変さが残っていく時に、最初のそういうところでの掛け違いが原因で長引いていることもあるかなと思います。

 

再び「縁」について♡

木ノ戸:蓑島先生は今回の座談会を「縁」という風に言ってくださったんですけど、何かそういうものに対するお考えってあるんですか?

蓑島:僕は繋がりを求めつつ外に出られない人間だったんです。固い話なんですが精神科で仕事をするようになって、これからどうしたらいいのかと悩んでいる時に、本当に偶然だったんですが、イタリアの精神医療を見学するツアーがあったんで参加したんです。イタリアには単科の精神病院がない[5]んです。僕は精神医療の見学だけのつもりが、たまたま案内してくれた人が人類学者で、ユダヤの収容所跡にも連れて行かれて。見学が終わった後にぼそっと「これができたことと精神病院ができたことは同じだよね」って疑問を落とされたんです。で、そうやって頭を壊されていく中で、その時に一緒に行った知らなかった人たちと、食事を囲んで美味しいワインを飲んでゲラゲラ笑いながら話をしたんです。そのうち何となく知り合えていくようになって、日本に帰ってからも「こんな面白いこと今度あるんだけど来てみない?」とか誘っていただいたりして。これまでの閉じた世界と変わっていくんですよ。多分この場に来ているのもその延長じゃないかと思うんです。怖いけど自分を出してみた時に、そこに招かれるというか、そういうのは起こるべくして起こるんだと感じます。

 

[5]1970年代に脱精神科病院を掲げて政策転換、1998年には全ての精神科病院が機能を停止し、そのマンパワーとお金を地域支援に注ぎ込み、患者さんの地域での生活を可能にした。

 

2017年5月8日(月)夜の京都にて…

(フリーペーパー「Swinging Vol.22/特集:精神科医×芸大教授×ドシロウト 〜「身体性」と「目に見えないモノ」〜」より転載)

 

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【揺れるシセツチョー】その男、沼田亮平につき

沼タンク/Q/2016

 

以前の職場で共に職場改革を目指した同士であり、またスウィング立ち上げメンバーのひとりでもある沼田亮平。けれど二〇〇六年、殆ど資金的な裏付けなくはじめたスウィングに彼を雇う余裕はなく−当時、僕の“月給”は千円を下回っていた−、沼田は時間を見つけてはスウィングに顔を出し、いつ来るとも分からないスウィングで働ける日を夢見ていたのだった。

そんな沼田がスウィングで働きはじめたのは二〇〇七年四月、スウィング設立二年目の年からである−運良く、あるいは努力の甲斐あって補助金交付が決まったのだ−。割合に早いタイミングで沼田を迎え入れることができ、「また一歩前に進んだなあ」と感慨に浸ったのは束の間、僕はひとつの事実を痛烈に突き付けられることになる。それは沼田の極端なまでの不器用さである。え? こんなにも口下手で、こんなにも仕事の要領が悪い男だったの? ほんで何でいっつもバタバタパニくってんの? 以前の職場では職場自体の環境が余りにも酷すぎて個々の力に目を向ける暇などなかったし、僕もスウィングも当然今よりずっと若く、いろいろな意味で余裕がなかったこともあるだろう。けれどひとりの力が大きく物言う小さな職場において、この不器用な四六時中パニクり男を一体どう活かしてゆけばいいのか。沼田のことばかり考え、眠れぬ夜を何度過ごしたことだろう。口を開けば沼田の愚痴しか出ない酒を何度飲んだことだろう。もちろん当の沼田本人も(眠れなかったことはないらしいが)深く悩んだ。出来ない自分に真摯に向き合い苛立ち、笑いの絶えない日々の中にあっても、基本的には拭いきれない不全感を身にまとい続ける苦しい日々を送った(はずだ)。

その一方で沼田はスウィングの誰からも愛された。笑顔のQ氏に常にボコボコにされていたり、誰しもが持つやり場のない感情をぶつけられる「壁」(悪く言えば「的」)になったり、不必要に慌てふためく様子をたくさんの笑顔で見つめられたり(はっきり言えば笑われていたり)、沼田本人にとっては少々分かりにくいものだったかもしれないが、とにかく皆に愛され続けてきたことは疑いようがない。しかしながら愛されるだけでは仕事も組織も上手く回らない。僕は注意深く沼田を見つめながら、時間をかけてスウィングの仕事と沼田の仕事が重なる部分を探し続けた。スウィングには子どもと関わる場面が多いが、そういう時の沼田はいつも本当に楽しそうな表情を浮かべている。毎年、秋に必ず見せるジェスチャーゲーム(わく星学校運動会、お決まりのプログラム)での演技力には光るものがある。あるいは時と場合を問わず、追いこまれた時に見せる瞬発力にはたくさんの人を笑わせる力がある。そうして少しずつ、ワークショップやゴミブルーや寸劇等、子どもを楽しませる仕事を担当してゆくようになった沼田は、その本領を眩いばかりに発揮しはじめ、文字通りスウィングになくてはならない存在となったのである。…にも関わらず、当の沼田は相も変わらず眉間に皺寄せ、難しい顔をし続けているではないか。一体どうして?

そう、沼田は自分の出来ることには目を向けず、出来ないことが出来るようになることをいつまでも追い求めているのだ。確かに出来ないことを出来るようになりたいという気持ちや心意気は大切だと思うが、そもそもこの社会に蔓延し、恐らく多くの人を苦しめている出来ることは=良いこと(素晴らしいこと)、出来ないこと=悪いこと(ダメなこと)といった価値観って一体何なのだろう。ホント何これ? 教育? マジで意味分かんない。出来ることはただ出来るだけ、出来ないことはただ出来ないだけ、良い悪いでもないし、それ以上でも以下でもない、これじゃいけないんだろうか?

 

ええ加減「“まともに”出来るようになりたい」を捨てて、自分自身の“らしさ”に賭ける勇気を持て。

 

これはつい最近、僕が沼田に投げかけた言葉だ。出来ないことはもうさっさと諦めて、自分が出来ることを精一杯やり続けて欲しい。そしてこの諦めこそが、出来ないことが出来るようになることの出発点にもなり得るのだから。ああ、こうは言っても眉間に皺寄せ頭を抱え、悩み続けるあの姿がありありと目に浮かぶ。少し気の毒な気もするが、この泥沼のような生真面目さこそが、他ならぬ沼田“らしさ”なのだろう。

(フリーペーパー「Swinging Vol.21 総力特集:永遠のリストラ候補 沼田亮平 」より転載) 

 

文:木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

NPO法人スウィング理事長。立命館大学文学部日本文学専攻卒。NPO、演劇、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑えるよ」という友人の勧めで障害のある人に関わる仕事に就く。2006年にNPO法人スウィングを立ち上げ、「障害福祉」の枠を超えた創造的な取り組みを通して、社会を変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。

 

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【クソ真面目エッセイ-12】不器用+勢い=沼田亮平

 

沼田亮平:1979年5月6日生まれ。B型、おうし座、左利き。生まれた時に看護士さんが受け取り損ね分娩台から落ちたため、しばらく高熱が続く。その影響で現在も腎臓が普通の人の半分くらいしか働いていない(今なら裁判でたくさん慰謝料をもらえていたに違いない…)。現在37歳なので、腎臓の年齢は74歳。

 

スウィングに勤めて早10年。今号の「Swinging」は「総力特集・沼田亮平」。自分ではなんのことやら…という感じであるが、とにかく総力特集である。普段口下手な分、今回はこの場を借りて出来る限り自分のことをさらけ出そうと思う。

 

先日、特集ページのために『ひとりの「ただの男」を掘り下げるということ』と題した3時間に及ぶ座談会を開催していただいた。結果どうであったか? 自分でテープ起こしをして感じたことは「コイツ(=自分)全然しゃべらんなあ…」である。いったい何をそんなに躊躇しているのか? というくらいにしゃべらない。発行部数7,000部にビビッているのか? いや違う。常に「正しい答え」を答えようとばかりしているのだ。もちろん僕が「正しい答え」を持っているわけでもないし、そもそも「正しい答え」なんて存在しない。強いて言うならば、自分への質問なのだから自分の返す言葉が正解なのだが、何かがブレーキを踏んでしゃべらせない。僕の言葉を皆が待ってくれているのに。

 

その原因を突き詰めてゆくと中学2年生の頃まで遡る。僕は当時、クラスでも明るい方だったと思う。授業中に冗談を言って笑わせることもよくあった。だが、ある日授業中に冗談を言ったクラスメイトの男の子が「おもしろくない」とクラス中からボロカスに言われ、泣いてしまった。その光景を見た日を境に、急にしゃべれなくなってしまった。恐らくこれが「他人の評価を気にする」ようになった初日である。

 

その日から“そこだけ”を見て生きる人生がはじまった。しかし、それだけにとどまらず、他人からの評価を怖れるあまり、「評価されないようにしよう」と心がけはじめた。なるべく意見を言わず、表に出ず、自分が傷つかないために息を潜めていようとした。ただ、幸か不幸か逃げることも上手く出来なかった僕は、今度はただひたすら「上手くやろう」とばかり考えるようになった。「そこがアナタの魅力ではないよ」と誰しもが気づいていたのだろうが、自分だけは気がつかず、「なんとかせねば」とひたすら自分を変えようとした。もちろん上手く出来ずに見当違いの失敗ばかりする。知らなかったのか、それとも知らないふりをしていたのか、自分が「不器用」であることを「ちゃんとせねばならない」という思いで覆い隠し、出来ない自分を否定する自己嫌悪の日々を、二十数年間に渡って送り続けた。

 

自分が目を背け、否定し続けた「不器用」こそが強みであり、沼田らしさであると言われ続けて10年目。まだまだ過去の呪縛を完全に解くことは出来ていない。しかし、スウィングで寸劇やワークショップを担当させてもらい、「人前に立つ」という自分が最も恐れていた場面を繰り返し経験してゆくことで、思いもしなかった「自分らしさ」の端っこを掴むことは出来たように思う。ガチガチに緊張し、読み込んだ台本のセリフをすっ飛ばしながらも、「勢い」だけを頼りに乗り切ってきた。それでもまだ過去の自分は「上手くやれ、上手くやれ」と耳元でささやいてくる。それこそが否定すべき自分であり、さんざん失敗してきた原因でもあるのに。

 

二十数年間の呪縛から解放される日はまだ先だと思うが、ようやくスタートラインに立つことは出来た。「器用に生きたい」「上手くやらねばならない」という自分自身にかけ続けた呪縛を解く場所がここにあること、またそんな呪縛に苦しみ悩む自分を諦めずに見守り続けてくれる人たちがいることを今一度心に刻みつつ、自分らしく、「不器用」に生きる道を進み続けたいと思う。

(フリーペーパー「Swinging Vol.21 総力特集:永遠のリストラ候補 沼田亮平 」より転載) 

 

文:沼田亮平(ぬまた・りょうへい)

1979年5月6日生まれ。大学時代はボランティアサークルに所属。地域の児童館をまわり、人形劇や工作のワークショップを行う。卒業から十数年の時を経てこれらの経験が活きることになるとは、当時の沼田は夢にも思っていない。

 

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【クソ真面目エッセイ-11】なあ、沼田くん。

 

今号の「Swinging」は沼田くんの特集だって。ちょうどよかった。聞いてほしい話があるんだよ。特集されついでに、沼田くん、ちょっと聞いてくれよ。

 

昨日まで元気だった人が、今日、亡くなってしまう。そういうことを、仕事の上で二度経験したよ。たくさんの向精神薬の副作用で、筋肉の一部が固まり足を引きずって歩いていた人の「原因不明の突然の」死。大柄な父親から、体が吹っ飛ぶほどの殴打を日常的に受けていた人の「急な」病死。原因不明?突然?多剤多量処方が、暴力が、その死に関係していないわけがないと思うのだけれど。お茶を濁されながら生きていた人たちは、その最期だってうやむやにされてしまったよ。

急に家を飛び出したり大声をあげたり食事のたびに嘔吐したりして、家族からも福祉関係者からも「無理」と言われて精神科に入院させられた人がいたよ。退院の予定のない入院は、もうすぐ五年目を迎える。二十代で、人生を丸ごと封印された人。 拘置所での生活と有罪判決を経て、地元から遠く離れた町の施設で暮らしている人がいるよ。裁判中に支援者から提示された出所後の道は、施設入所かホームレスの二択。選択の余地はないから、実質的には強制的に入所させられたわけだけれど、それでもこの人は「自分で」遠くの施設に入ることを「選んだ」と思っている。「そう思わされている」ということに、気づいていない。 なあ、沼田くん、あの人の死を、あの人の入院を、あの人の事件を、防げなかったのは、誰だと思う?あの人から目をそらし、あの人を捨て、あの人にふたをしたのは。いつも安全な場所で手をこまねき、論点をはぐらかし、自分の生活を優先させているのは。全力を尽くしていることに偽りはなくとも、そもそも力を注ぐポイントがずれている、手をつけやすいところだけを撫でているのは。その「関係」の当事者だというのに、部外者ヅラをしているのは、だーれだ?

 

「それはお前だろ」ってか。ああそうだよ。

沼田くん、それは俺だよ。

 

そんな俺に、福祉ファンタジーのテーマソングを歌うのは、やめてくれよ。利用者の思いを尊重しようって、もう言うなよ。一緒に暮らしている家族の気持ちでさえよく分かっていない、この俺に。利用者本位の支援を提供しようって、もう言うなよ。そんなに豊かな想像力は持ち合わせてはいないよ。利用者の潜在能力を引き出そうって、もう言うなよ。そんなことができるって、どれだけうぬぼれたら思えるのだろう。利用者の強みを活かそうって、もう言うなよ。お前は強みを活かしていないなんて、そんなことを言われたら、マジうざいよ。関係機関と連携しようって、もう言うなよ。いつもいつも連れションばかり勧めるなよ。天気のいい日は一人で立ちションさせてくれ。すべては計画書に沿ってって、もう言うなよ。その紙っぺらに書かれているのは、茶番劇のシナリオじゃないかよ。

なあ、沼田くん。うぬぼれと勘違いと嘘と自己欺瞞のアンサンブルを、超ファックな福祉ファンタジーのテーマソングを聞いているうちに、「エンパワメント〜♬か〜ら〜の〜ストレングスモデル〜♬」なんつって、いつの間にか口ずさんでしまっている、ゲスの極みの乙女座のおっさんは、だーれだ?

 

「それはお前だろ」ってか。ああそうだよ。

沼田くん、それは俺だよ。

 

なあ、沼田くん。支援員とかヘルパーとかいう立場の我々に、できることがあるとすれば、それは何なのだろう。我々がなすべきことは、何なのだろう。我々はどこに向かえばよいのだろう。いや、違うよ。答えがほしいとは思っていない。知っているよ。こういう問いに解はない。でもすでに、我々は何かができていて、何かを期待されていて、どこかに向かって歩き出してしまっている。正しいのかどうか分からないままに、よく分からないままにそうなっているということの気持ち悪さ、しっくりこない感じを、沼田くんと確認し合いたいんだよ。

なあ、どのぐらい気持ち悪い?ナマズを枕にして寝るぐらい気持ち悪い?

何をしてもしなくても、歩こうが立ちどまろうが、いつもしっくりこないだろ。

なあ、沼田くん。どのぐらいしっくりきていない?ナマズをどうしたときぐらい、しっくりきていない?

(フリーペーパー「Swinging Vol.21 総力特集:永遠のリストラ候補 沼田亮平 」より転載) 

 

文:駒田健一(こまた・けんいち)

2010年12月に株式会社Straightを設立。ヘルパー派遣事業所「ストレイト・コンサルティング」、ショートステイ事業所「ストレイト・フローネル」管理者。食べてみたいものはオオサンショウウオ。京都市在住。

 

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【座談会】ひとりの、ただの男を、掘り下げるということ

 

「永遠のリストラ候補」と呼ばれながら、スウィングで唯一無二の輝きを放ち続ける男がいる。その男、沼田亮平。ひとりの、ただの男。このただの男に徹底して向き合うことで、そして沼田自身が徹底して自分に向き合うことで、見えてくるものはあるのかないのか? そこに普遍性はあるのかないのか? …やってみないと分からないからとにかくやってみようぜ!

 

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プレッシャーの源

木ノ戸:「Swinging」のことをちょっと振り返るとね、18号、19号と結構お金もかけて一生懸命「障害者アート」を特集しました。で、前号(特集:「軽度」の「障害者」と呼ばれて。)のは割と気楽にやったんですよね。でも、今まででいちばん反響があった。具体的には会員がめちゃくちゃ増えたり。で、今回の特集が「沼田亮平」。どう転ぶかわからへん(笑)。沼田君、全然プレッシャー感じてないって言ってたけど、今はバリバリ感じてるの?

沼田:そうっすね。

全員:(笑)

木ノ戸:何に対してのプレッシャー? 全国に7,000部配られるっていうことに対して?

沼田:何ていうか…内容…。この数時間でちゃんとものになるだけのことを喋れるかっていう…。

西川:真面目やなぁ。

木ノ戸:内容? 7,000部配られるのは別に気にならんのやろ?

増田:あんまり気にしないんすか? そういうの。

沼田:内容です、だから。

木ノ戸:マジで⁉ 特集「西川雅哉」、嫌やろ?

西川:絶対嫌です。7,000部全部回収に行くわ。

全員:(笑)

亀井:そこじゃないってことですか?

沼田:実際に7,000部言うても、直接その相手が見えるわけじゃないっていうか。

木ノ戸:沼田君からは見えなくても、相手からはめっちゃ見られんで。

沼田:それは全然。

亀井:7,000って、ねぇ…。

木ノ戸:じゃ、フリーペーパーじゃなかったら? お金出して買われるとしたら?

沼田:あ、でも別にそこじゃなくて、やっぱり中身が。この数時間でちゃんと読んでもらえるだけのもんが出せるかって、そこだけです、僕は。

木ノ戸:そうなん? 狂っとんなぁ(笑)。

全員:(笑)

 

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パニクリスト(=テンパリスト)沼田亮平

木ノ戸:沼田君、ド凹みしたん、あれ、いつやったっけ?

沼田:一昨日です。

木ノ戸:あそこまでのは見たことなかったな。あんなに人前で凹んだ沼田君。

沼田:凹んだというか。え〜と、自分らしさの話ですよね、だから…。

木ノ戸:おれも西川君もね、いっしょに遅くまでね…。沼田君は自分らしさに悩んでんねん。増田さん、沼田君の「らしさ」ってなんやと思います? もう12、3年の付き合いでしょう?

沼田:長いっすねぇ。

木ノ戸:増田さんが休んでた日以外はずっと会ってるんですよ。

全員:(笑)

増田:そうですね、休みがち[1]だったんで(笑)。沼田さんらしさねぇ、何なんすかねぇ。なんかこうテンパってるわけじゃないんですけど、そういう風に見えるっていうか…。

 

[1]最盛期の増田は出勤率3割を誇る(つまり7割欠勤)。

 

木ノ戸:テンパってるわけじゃない? テンパってるんですよ。

全員:(笑)

増田:テンパってるんだと思うんですけどね。だから仕事に関しても何にしても頭がパンパンになってね、沼田さんの場合は。本性というか、本当の沼田さんをオブラートで包んでるように感じるんすよ。

木ノ戸:オブラートに包んだら、あんなに露骨にパニクりますかね?

増田:とったらパニクりどころじゃないと思いますよ。

亀井:とったら? オブラートを? 

増田:もっとひどいことになるかもしれないっすね。

沼田:でも、そうかもしれないです。

木ノ戸:えっ、何? パニクってる時もやっぱりオブラートに包まれてるんや?

沼田:包まれてます。

亀井:もっとすごいってことですか?

西川:包んでるのか…あれで。たぶん包めてへんと思うよ。包み方がちょっと…。

亀井:雑!

木ノ戸:“眉間のしわ”が合図やんな。自分では分からへん?

沼田:自分では分からないです。はい。

西川:普通パニクるところでパニクらないんですよね。この前のワークショップは台本無しのぶっつけ本番でも普通でしたよ。

木ノ戸:何でなん? 場数を踏んできたから?

沼田:いや。

木ノ戸:舞台上がったら吹っ切る感じの人なん?

沼田:あぁ、そうやと思います。

木ノ戸:かっこええなぁ! 越路吹雪[2] と一緒やん!

 

[2] 言わずと知れた日本を代表するシャンソン歌手であるが、いつも本番前には舞台袖でガタガタ震えて緊張していたという。1980年没。

 

西川:10周年パーティー[3] の司会も、はじまる前の緊張ひどかったですもんね。

 

[3] NPO法人スウィング設立10周年記念パーティー(2016年6月18日開催)。全国各地より130名を超えるご参加をいただいた。

 

沼田:はじまってしまったらしょうがないっていうか。でもやっぱり「上手いことせなあかん!」っていうのがずっとあって、そこに縛られがちというか。

木ノ戸:考え過ぎんねんなぁ…。沼田君の「らしさ」って、おれは「勢い」と「瞬発力」って言うたやん? それは分かる?

沼田:ワークショップの場とかではそうやなって分かるんですけど。日常の中でどうそれを持ってくればいいのかというか、どう位置づけたらいいのかが分かっていなくて。

木ノ戸:西川君の思う沼田君の「らしさ」は?

西川:「不器用」。

木ノ戸:「不器用」は知ってるん?

沼田:そこはもう、はい。重々分かってます。

西川:「不器用」なのに、何か器用にやろうとしてる自分も分かってる?

沼田:はい。上手いこと何とかしようって。

亀井:何とかせんとあかんのですか?

沼田:「不器用」って何ていうか、いいことじゃないですもんね、だって。

西川:高倉健は「不器用」やで。

木ノ戸:高倉健を否定すんのか? 死んだ人を悪く言うな!

沼田:高倉健を悪く言ってるわけじゃないですけど。

西川:どんななりたいん?

木ノ戸:「不器用」じゃなくなりたい?

沼田:あぁ、そうですね。

木ノ戸:マジで!? ほな、もう沼田君じゃなくなるやん。

亀井:ほんまや。

木ノ戸:器用になったら、たぶんスウィングにいられなくなると思うよ。もう、沼田じゃないって。

亀井:別人ですもんね。

木ノ戸:違う人を雇ったことになるやん(笑)。

増田:何でそんなに「不器用」が嫌なんですか?

木ノ戸:しつけ?

沼田:あぁ、そういうことじゃないですかね。

増田:しつけとか、そんなんあるんですか?

亀井:「不器用」があかんって?

沼田:そら、「不器用」はあかんって普通言うでしょ。

木ノ戸:言われたこと無い。おれ、何でもできたもん。

亀井:それでしんどかったんですよね。

木ノ戸:そやで。学校行けへんくなるくらい。

亀井:そや、そや。それでしんどいこともあるってことですよ。

沼田:それがもう、意味分かんないですよ、だから。

全員:(笑)

増田:沼田さん、今後どうしたいんですか?

木ノ戸:ず〜っと、悩んでるもんなぁ。

沼田:今後はだから「不器用」をどう活かしていくかを考えようと思ってます。…考えたらあかんのかな?

木ノ戸:「不器用」ってのはやっぱりあれやんね。強み弱みで言うと弱みの方やんね。

沼田:はい。そうやと思います。

木ノ戸:弱みの方やから力になるんやって。

沼田:あぁ、なるほど。

木ノ戸:でも、器用になりたい自分をあきらめきれへんのや(笑)?

沼田:…。

 

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「沼田-亀井ライン」の真相

木ノ戸:子供の頃も「不器用」やったん?

沼田:どうなんすかねぇ、あんまり覚えてないんですよね。

木ノ戸:平均的な子供やったって感じ?

沼田:そうやと思います。

木ノ戸:「不器用」やと思い出したのはいつ頃なん?

沼田:たぶん中学2年ぐらいまであんまり考えなかったんやと思います。で、中2ぐらいから何か上手いことしようみたいに思いはじめて。で、こうドツボにはまっていくというか。

木ノ戸:何で中2やったん? 何かきっかけがあったわけじゃないの?

増田:トラウマとかなかったんすか? 中学時代に。

沼田:あったんすかね…。何かあったんかもしれないですけど、ちょっと分かんないです。

木ノ戸:ワキ毛が生えたとかそういうやつ?

亀井:そんなんもありそう。

沼田:全然関係無いと思います。何か大勢の前で喋らないとか、授業中も当たらないようにするとか、静かにしておくというか。その頃の感じをたぶんまだ引きずってるんじゃないですかね。

増田:中2からずっと引きずってるんですか?

沼田:上手いことせなあかんみたいな…。

木ノ戸:あの〜、「沼田-亀井ライン」ってよく言うてるやろ? 沼田君は分かりやすくパニクる。でも亀ちゃんは非常に分かりにくくパニクる。でも下の子たちとかには“しっかりした亀井さん”って言われてる。

亀井:しっかりしてないのに。

木ノ戸:しっかりせなあかん病。で、実際にそういう風に見せることに成功してんねん、ある意味ね。でも、そこにしんどさがあるわけやん、きっと。「不器用」なのに器用にならなあかん沼田、しっかりしてないのにしっかりせなあかん亀井。シンクロ!

亀井:おぉ〜!

西川:ここはハイタッチせんと。

木ノ戸:「不器用」やしできひんねん(笑)。だから、これがおれが言うてる「沼田-亀井ライン」。…今、わかったん?

沼田:はい。

亀井:えぇっ!?

増田:今!?

木ノ戸:沼田君って、亀ちゃんのパニクり見えてへんの?

沼田:あんまり見えてないですね。

亀井:成功してる(笑)。わたし、沼田さんパニクってるなって見えてますよ。

木ノ戸:全世界が見えてる(笑)。

亀井:でも、なんか沼田さんがテンパってて、それ見てほっとしますね、なんか。

全員:(笑)

木ノ戸:テンパる人の気持ち、西川君分かる? テンパることってそらあるやん?

西川:はい。分かります。よくテンパってますよ、僕も。でもテンパっててもしゃあないってなるんですよね、最終。テンパってもしゃあないんで、テンパるのやめようってなるんです。

亀井:どうしてはるんですか?

西川:やめたらええねん。

亀井:えっ、違う違う。深呼吸するみたいなこと…。

木ノ戸:やめんねん。あきらめんねん。手放すねん。

亀井:えぇぇっ!?

沼田:(大きなため息)

亀井:手放したらどうなるんですか?

西川:手放して見えることもあんねん。

亀井:誰かが代わりにやってくれるってことですか?

西川:いやまぁ、そういうこともあるし。手放すことで客観視できるし、こうしたらいいんかって分かることもある。

木ノ戸:亀ちゃんがいくら力んで展覧会作ろうが、楽に展覧会作ろうが、たぶん一緒なんよ、結果は。じゃあ、何でしんどい道を選ぶんやろ? っておれには見える。

亀井:う〜ん…ベストを尽くせ! みたいな感じなんですかね?

木ノ戸:がんばればいいものができるっていう幻想やな。

沼田:あ〜、なるほど。

亀井:呪縛や!

増田:呪縛ですね。

木ノ戸:でも沼田君、テンパった時に力出すっていうのがあるからなぁ。

亀井:すごい(笑)。

木ノ戸:テンパった時はもうやるしかないんやんね?

沼田:はい。

木ノ戸:「勢い」と「瞬発力」。

西川:いったん、テンパらなだめなんやね、沼田さんは。沼田さんがテンパると周りがざわつくんですよね。

全員:(笑)

木ノ戸:周りが喜ぶ(笑)。亀ちゃんが感じた安心感のようなものをみんな感じてる。

亀井:みんな、それ見てほっとして。でも沼田さんはしんどいまま…。

増田:それもまたきついわな。

沼田:…そうですね。

 

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華麗なる職歴

木ノ戸:魚屋は楽しかったの? あれ「勢い」だけやろ?

沼田:そうですね。

木ノ戸:ほれ、適職や。

亀井:何で魚屋でバイトしようと思ったんですか?

沼田:そういう仕事をしたことなかったから。

木ノ戸:職歴は? いちばん最初は?

沼田:「地方労働委員会事務局」ですね。

木ノ戸:そんなん、どこで見つけたの?

沼田:ハローワークです。時給がよかったんで。

亀井:何でそこ辞めたんですか?

沼田:産休か育休かの代理で入ったので復帰しはって辞めました。その後、福祉施設に半年。

木ノ戸:そこはリストラやんね? 何て言われたんやっけ?

沼田:僕が直接言われたわけではないんですけど、僕より動けている人が「個体としての能力が低い」って言われてはって。僕のこともそう思ってはるんやろうなと。

亀井:別の人が言われてたことを聞いて「自分の方が低いな」って思って、それで辞めたんですか?

沼田:それが直接の原因じゃないけど…。

木ノ戸:結局、自分から辞めたん? スウィングに来るタイミングやったから?

沼田:いえ、その次が魚屋です。

木ノ戸:魚は何がいちばん売れたん?

沼田:いちばん売れたのは「ブリ」じゃないですかね、やっぱり。

木ノ戸:…「常識やろ?」みたいなニュアンスで言うのやめてくれる?

亀井:でもスーパーの魚屋って、そんな「いらっしゃーい!!」みたいな感じじゃないですよね?

木ノ戸:沼田君は言うてたんよ。革命起こしたんやんな(笑)?

沼田:いや、みんな言うてましたよ。楽しかったです。

木ノ戸:じゃあ、魚屋辞めたのはスウィングに来るってことが決まったから?

沼田:そうですね。

木ノ戸:(魚屋とスウィングを)天秤に掛けた?

沼田:いえ、掛けてないです。

亀井:何でスウィングに来ようって思ったんですか?

木ノ戸:何でっていうか一応はじめから働くことは決まっててん。スウィング設立直後で雇えないから待機状態やったんやんね。

 

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哀しき永遠

木ノ戸:で、スウィング来て10年?

沼田:10年目です。

木ノ戸:最初の頃にゴミブルー[4] とか10周年で司会するイメージはあったん(笑)?

 

[4] スウィングが展開する清掃活動「ゴミコロリ」の広報部隊、「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」の構成員。全員、ゴミブルー。

 

沼田:全く無かったです。自分の中に無いと思っていたもの、いちばん苦手でできないと思っていた部分ですから。増田さんもゴミブルーに最初は抵抗あったじゃないですか?

増田:はい。結構ありました。

亀井:ノリノリじゃなかったんですか?

木ノ戸:(最初にゴミブルーになった時)なかなか着替えへんねん、この2人。

亀井:えぇっ⁉

増田:そうですよ。最初は恥ずかしいっていうか、沼田さんもあったでしょ? 入ったら自分を解放できるっていう感じなんですけど。

沼田:まあ入ってみるまでは分からんっていう感じですね。

増田:今は「仕事やしがんばろう」とか「子どもらにアピールせなあかんし夢を壊したらあかん」って思ってやってます。

木ノ戸:寸劇[5] も最初の時は緊張してたけど、今は「あそこ、もっとこうできた」とかしか言わないですもんね(笑)。

 

[5] 小学校低学年男子に的を絞り込んだ寸劇、「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー登場!!」を各地で上演中。

 

増田:そうですね。自分の演技に反省点はありますね。沼田さんは?

沼田:プラスの部分はあまり。反省ばかりですね。

亀井:プラスの部分無いんですか? 全く?

沼田:…今の自分がいいとは全然思ってないからね。

木ノ戸:「できた!」とは思わへんの?

沼田:「もっとこうしたら良かった」の方が大きいですね。

西川:あれ以上、何をしようとしてんの?

木ノ戸:フルパワーやろ? もっといけるん?

沼田:やり切ったという実感が無いというか、「ホンマにこんなんでええんか?」という感じですね。

西川:今までに達成感を感じたことってどんなこと?

沼田:う〜ん、達成感…。あんまり無いかもしれないです。覚えてないです。

木ノ戸:暗いな〜(笑)。じゃ、自分から離れてスウィング全体のこの10年はどう見える?

沼田:いろんな側面があるというか、スウィングの見え方が多彩になったと思います。

木ノ戸:そこに自分が大きく関与しているとは思わないの?

沼田:大きくとは思わないです。

亀井:けど、ワークショップとか沼田さんがおらんと上手くいかないこととかあると思うんですけど。

沼田:ワークショップは新たに見つけた自分というか、「不器用」と「勢い」が上手くはまったというか。そういう意味では手ごたえがある気がします。

木ノ戸:スウィングにとってはすごく大きいことやけどね。増田さんはこういう沼田君を見てどう思いますか?

増田:変わってないっちゃ変わってないんやけど、変わって欲しくない部分もあるし、変わって欲しいと思う部分もありますね。

木ノ戸:変わって欲しい部分を大事にしがちなんやな、沼田君は。でも、変わって欲しくない部分っていうのも分かるやろ?

沼田:そこは自分の中ではあまり良くない部分やと思ってしまってる。

全員:(ため息)

木ノ戸:良くない? 誰が決めたん?

沼田:自分が決めました。思い込んでるというか。

亀井:嫌いなところってことですか?

沼田:そうやね。あかんところ。

 

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木ノ戸:じゃ、自分の好きなところは? チャームポイント。

沼田:…無いですね。好きなところ。

全員:……。

木ノ戸:増田さんが言う、変わって欲しくない部分ってどこなんですか?

増田:ずっと“眉間のしわ”を寄せといてほしい。それが沼田さんやから。

西川:チャームポイントや!

沼田:どこがいいのかさっぱり…。

木ノ戸:ミステリアスやな(笑)。じゃ、例えばQさんとかちゃんと沼田君の悪口言うやん? あんなんの方が気持ちいいわけ?

沼田:分かりやすいです。

木ノ戸:悪口が? 悪口の方がピンとくるんや?

西川:Qさんの悪口、ピンとくる? 割とピントがズレてるけど(笑)。

沼田:「何でやねん!」とは思いますけど、「いいね、いいね」って褒められてるよりは実感があります。

西川:褒められたくない? 褒められ慣れてない?

沼田:どこを褒めてんのか…。

木ノ戸:じゃ、褒められるよりも叱られてる方が?

沼田:そら実感しますね。

木ノ戸:褒められている自分は「嫌いな自分」、叱られている自分が「好きな自分」なん?

沼田:好きではないですけど。

亀井:褒められてる自分は自分じゃないってこと?

沼田:実感が無い。

西川:重症やな…。

木ノ戸:じゃあ、スウィングで働いてきていちばんムカついたことは?

沼田:う〜ん。出てこないですね。

木ノ戸:いちばん嬉しかったことは? 心がはしゃいだこと。

沼田:南大路町[6] 地蔵盆に呼んでもらえたことですかね。

 

[6] 京都府京都市北区上賀茂南大路町。スウィングの所在地。

 

木ノ戸:何でそう思うの?

沼田:地域の人に認められた実感があったんやと思います。児童館との交流[7] を毎月できるようになったのも嬉しかったですね。

 

[7] 「京都市上賀茂児童館」の子どもたちと毎月必ず1回以上遊んでいる。スウィングにとって、とても大事なこと。

 

木ノ戸:南大路町に住んで児童館に勤めたらええやん。

全員:(笑)

木ノ戸:じゃ、今回のキャッチコピー、「永遠のリストラ候補」についてはどう思ってる?

沼田:不安ですね…。

亀井:“永遠の”やからリストラされないんじゃ?

西川:「リストラ」って言葉だけに踊らされてるな。

木ノ戸:亀ちゃんは沼田君の話に共感する部分はあるの?

亀井:「自信が無い」とかは一緒ですけど。とりあえずやってみて、出来上がったものに対しての反省はあまりないです。「いいものができた!」と思えます。

木ノ戸:そこが違うとこやな。

亀井:だから、もっと「やったー!!」とか思わはったらいいのに。

木ノ戸:そう思えた瞬間に沼田君じゃなくなる(笑)。

亀井:そうか。…えぇっ⁉ じゃ、ずっとこのままですよ? 永遠ですよ?

木ノ戸:永遠の沼田亮平や。

全員:(笑)

 

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沼田からの逆質問

木ノ戸:みんなに逆質問してみたら? 必ず下の名前で呼んでね(笑)。

沼田:自分の「らしさ」の活きる先が今のところワークショップだけ。マサヤは〜…「不器用」と「勢い」を他にどう活かしたらいいと思いますか?

西川:「不器用」とか「勢い」という言葉に囚われがちなんやと。深く考えずに、変に準備せずに。「不器用」とは? 「勢い」とは? とか考え出すとおかしくなると思う。

沼田:マサオは〜…自分を追い込こむ癖があったじゃないですか? そこが変わった実感とか乗り越えた瞬間ってあったんですか?

増田:今んとこに引っ越してからやと思います。それまでは言えなかったこともあったし、言いたいけど言えないモヤモヤを持ちながら仕事に行ってたこともあったんですよね。人からどう見られてるか気にしたり。緊張の糸をずっと張りっぱなしで、ずっとひとりで悩んでたんですよ。引っ越してからは、みんなにマンションに来てもらって嬉しい部分もあったし、そこから変わったんじゃないですかね。安心感で変われた。それで今の自分があると思います。

沼田:トモミは〜…自分がコンプレックスだと思っていることを褒められたら嬉しいですか?

亀井:自分が知らないことなら、そんな一面もあるんか〜って思います。言われてみないと分からんかったな〜とか、それでいいんやな〜とか。

沼田:僕は自分が「不器用」で「勢い」があるっていうことを知らなかったということなんやなって。知らなかったことを教えてもらったということなんですね。コンプレックスというよりも知らなかったということ。マサユキは〜…10年間ずっと僕に対して「そのままでいい」ということをいろいろな方法で伝え続けてきて、でも、まだ僕は同じところで悩み続けている。それでもあきらめずに言い続けてくれる理由ってどのへんにあるんですか?

木ノ戸:沼田君が自分のことをどう思おうが、おれは沼田君のままでいいって思ってる。だから勝手に苦しめばいいし、悩み続ければいい。沼田君をあきらめないってことは、自分をあきらめないってことと同じ。だから沼田君にメッセージを投げながら自分にもメッセージしてる。そう言い続けることしかできない。…ということで今日は何点?

沼田:良かったですか?

木ノ戸:良かったかどうかは分からん。

亀井:そこが不安やったんですね…。

西川:テープ起こし自分でするんやからええやん。話、盛れるやん。

沼田:盛り方が分かんないです。…点数は70点ですかね。

木ノ戸:…意外と高い!

 

from date:2016.12.21

(フリーペーパー「Swinging Vol.21 総力特集:永遠のリストラ候補 沼田亮平 」より転載) 

 

※ フリーペーパー「Swinging」は、スウィング賛助会員の皆さまからの会費を原資に制作・発行を行っております。→
※ 全国津々浦々「お!それウチに合うよ!置くよ!」という店舗さま等いらっしゃいましたら、スウィングまでご連絡ください!(10部〜20部程度)
※ 全国津々浦々「お!あの店に置いたらええんちゃうん?」的な情報がございましたら、スウィングまでご連絡ください! → Tel:075-712-7930 → Mail:swing.npo@gaia.eonet.ne.jp(木ノ戸)
※ 現在の配架先については(情報が古いですが)コチラをご参照ください。→
※ 次号「Swinging Vol.22」はもうちょっとだけ先! 2017年6月15日発行の予定です!

| フリーペーパー「Swinging」掲載! | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0)
【特集】「軽度」の「障害者」と呼ばれて。

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「軽度」ってなんなのか? 「障害者」ってなんなのか? 

やっぱり、なんだか、気になる、気になる。

 

「軽度」の「知的障害者」と呼ばれる人たちがいる。軽い? 重い? 軽ければ生きやすい? 重ければ生きづらい? 「健常者」ならば毎日がハッピッピー? う〜ん、なんか…雑。僕らの町のダサいヒーロー、ゴミブルー(女子1名はちゃみブルー。で、もうひとりは完全に別枠)として蠢く「軽度」の「知的障害者」とされる4人と(一応・便宜上)「健常者」とされると2人のド本音トーク、炸裂!!!

 

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木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)

1977年生まれ。NPO法人スウィング理事長。組織で働けないことを自覚し、自らスウィングを立ち上げた結果、いつしか組織を作ってしまったことに戸惑う39歳。

 

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櫻本京一(さくらもと・きょういち)

1973年生まれ。2011年、20年に渡る木材店勤務を経てスウィングへ。当初「木彫りの山川豊」と呼ばれた無表情で寡黙な男は、いつしか冗談しか言えなくなっちゃった♡

 

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沼田亮平(ぬまた・りょうへい)

1979年生まれ。スウィング歴9年。某福祉系大学でがっつりガチの福祉を学んだものの、その全てを「関係なかった」とのたまう、この親不幸者!!!

 

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更田麻美(ふけた・あさみ)

1980年生まれ。通称・あちゃみ。25歳で障害者手帳を手にしたことに葛藤しつつ、「口から生まれた」メリットを生かしてしゃべりまくる、明るいおしゃべりマシーン。

 

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増田政男(ますだ・まさお)

1970年生まれ。左官屋、自衛隊、夜の街での(あり得ない)豪遊等々、さまざまな経歴(?)を持つ体年齢31歳。

 

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XL(えっくすえる)

1967年生まれ。本名・服部光男。推定15年の引きこもり生活を経て、それからいろいろ経て、木ノ戸に騙されスウィングへ。「ヒグマ」「ポップ仏」等の異名を持つ。

 

 

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ひらめき自覚と葛藤と誇り

木ノ戸:前号、前々号と「障害者アート」の特集をしてきたじゃないですか。でもそれ以前に「障害者」ってなんや? っていう気持ちがそもそもあって。しかも「軽度」ってどういうことや? と。みんなはその「軽度」の「障害者」とされてるわけですけど、そのあたりどう感じてますか?

XL:なんやろ? 分からへん。

増田:普通にしてたら僕らなんも思われへんけど、療育手帳[1]持ってたら「障害者」って。周りからそういう風に見られるんかあ…っていうのがある。

 

[1] 知的障害者に都道府県知事(または政令指定都市市長)が発行する障害者手帳

 

木ノ戸:例えばゴミブルー[2] になってる時って、僕らが福祉施設の人間であることや、「障害者」であることって、なんも関係ないじゃない? 愉快なただのダサいヒーローでしょ(笑)? 寸劇してる時もね。ゴミブルーになってる時って「障害者」であることって薄れない?

 

[2] スウィングが展開する清掃活動「ゴミコロリ」の広報部隊、「まち美化戦隊ゴミコロレンジャー」の構成員。全員、ゴミブルー。

 

更田:薄れますね(笑)。

木ノ戸:でも、素の自分の時は自分がそう思うと思わざるとに関わらず「障害者」っていうレッテルが貼られてるわけやん。それに対して悲しいとか不愉快とか怒りとか悔しいとか、そういう気持ちを持って当然やと思うんやけど。

XL:悔しくないよ。

木ノ戸:「区役所」無い?

XL:違うわ!

櫻本:XLさんは「障害者」っていう自覚あるんですか?

XL:分からへん。

増田:酒も煙草もやるし、あれしたいこれしたいって普通に思ってるし。

木ノ戸:あちゃみちゃんは(療育)手帳もらったの25歳くらいやったっけ?

更田:そうですね。IQで決められるのがすごく嫌で…。結果を聞いてすごく凹みましたよ、あの時は。

木ノ戸:今、苦しみとかはないの?

更田:苦しみねえ…いっつも悩むのが、久しぶりに会った友達に「今、何してんの?」とか聞かれたりすること。会社に勤めてるとも言えず…。

木ノ戸:なんて答えてるの?

更田:最近やったらNPO法人で働いてるとか。

木ノ戸:ええやん。合ってるやん。

更田:1回、福祉施設で働いてるって言おうとしたけど言えず…。「どんな仕事?」とか聞かれると困るし…。

木ノ戸:言ったとして、どういう反応が返ってくるの?

更田:「へえ、そうなんや〜」とかで終わる。

櫻本:それはそれでいいんじゃない? 馬鹿にしたような反応じゃなければ。

沼田:(京都市バスを利用する時に)療育手帳を使うことには抵抗あったの?

更田:交付された当初はそういう葛藤はあった。今はまあまあ…。

木ノ戸:ラッキーくらいに思えてる?

更田:うーん…。

木ノ戸:みんな「定期」って言ってるやん。魔法のラッキーアイテム(笑)。XLさんとかそうじゃないの? お金払わんでラッキーって。

XL:うん。ラッキーって思ってる。

更田:まあ、確かに。今まで普通に運賃とか払ってたのに、タダで乗れてるな〜って。ただJRとかになるとやっぱり払わなアカンからあれやけど…。

木ノ戸:払わなアカン? 払わんでええってことは「特別扱い」されてるってことやで(笑)?

更田:そうですね(笑)。

木ノ戸:でも、スウィングでずっと働いてきてどう? 世の中の役に立ってるとかそんな気持ちはある?

更田:役に立ってるなぁって思います。誇りも持ってます!

 

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ひらめき元・「木彫りの山川豊」の変貌

木ノ戸:京一さんは今の仕事のこと聞かれたらどう答えてるんですか?

櫻本:たまに前の職場の人に会うんですけど。

木ノ戸:「おお、ゴミブルー! ご活躍で!」とか言われる?

櫻本:言われませんよ(笑)!なんて言われたかは忘れたけど、引け目という感覚はなかったな。

木ノ戸:スウィングで働くことは「福祉就労」って言われてますよね。そういう風に伝えてる?

櫻本:そこまでは言ってない。まあ向こうは(福祉就労したことを)知ってるから。

木ノ戸:今、思えば(木材店勤務の)20年間しんどかったでしょ? 今は楽しいでしょ?

櫻本:前とは緊張感が違うから(笑)。

木ノ戸:スウィングに来た当時は「木彫りの山川豊」でしたもんね。表情ひとつ変えずに貝のように口をつぐんで(笑)。高倉健のひどいやつ、「重度」の高倉健ね(笑)。

更田:しゃべってた記憶が無いなぁ(笑)。

沼田:高倉健も大概無口でしたけど、それを超えるわけですから、そりゃすごいですよ(笑)。木材店時代の20年間と同じような感じでスウィングでも過ごそうと思ってたんですか?

櫻本:ええ、まあ。

木ノ戸:あれはやっぱり緊張なの? ものすごい殻に閉じこもってる感じがしましたけど。

櫻本:ゆるすぎる人たちがいたから(笑)。前の会社は完全な仕事というか、プロというか。

木ノ戸:クレンジャーズ[3] もデコバッジ作りもゴミブルーやる時もめっちゃプロ意識持ってやってるじゃないですか。

 

[3] THE CLEANGERS(ザ・クレンジャーズ)。スウィングの主要事業のひとつである清掃業務及びそのメンバーたちの名称。(ややこしいけど)「ゴミコロリ」とはまた別。

 

櫻本:業種がまた違うから。

木ノ戸:業種っていうか前の会社では仕事すること以外無かったわけじゃないですか。友達もおらず、話す相手もおらず。

櫻本:まあ、お金も。

木ノ戸:でもあれでしょ? 手元に届いたのは給与明細だけでしょ? ただの紙切れじゃないですか。

櫻本:途中から銀行振り込みになって。

更田:で、お金の下ろし方がわからなかったんですよね(笑)。

櫻本:逆にそれが良かったかも。知っていたら、たぶん今頃ボロボロ。分からなかったのが良かった。貯まったから。

木ノ戸:「分からなかったのが良かった」! …深いなあ(笑)。

櫻本:まぁねぇ(笑)。

木ノ戸:京一さんも手帳もらったのって二十歳過ぎてからですよね。木材店勤務時代は持ってなかったでしょ?

櫻本:途中からですね。

木ノ戸:「びっくりした」って言ってましたよね。

櫻本:そうですね。「まさか自分が!?」っていう。けど、まあしょうがないかなって。

木ノ戸:悲しいとか、悔しいとかいう気持ちは?

櫻本:それは無かったなぁ。びっくりはしたけど、ああ、そうなんだっていう。

木ノ戸:逆に楽になったことはありますか?

櫻本:バスですね。

木ノ戸:出た(笑)。京一さんが4年前にスウィングに来た時、スウィングに来ることには、なんの抵抗も無かったって聞いてます。唯一の心配事は「何番のバスに乗ったらスウィングに行けるのか?」(笑)。すごいですよね。普通、仕事が合うかとか人間関係が上手くいくかとか心配すると思うんですけど。

櫻本:それはバスに乗ったことが無かったから…。

木ノ戸:いや、京一さんにはそもそも自分に人間関係ができるっていう前提が無かったんだと思うんですよ。友達いなかったのって木材店の20年間だけじゃないですよね。学校時代もですよね。でも、今はもう友達もできて、面白くもない冗談ばっかり言ってるじゃないですか(笑)? あれはずっと我慢してたんですか?

櫻本:いや、そもそもそんな思考回路がなかった。

増田:前から面白かったんやって。

櫻本:いやいやいや、過去の自分とは全然違う。

木ノ戸:たぶん変わってないんですよ。もともとこういう人で、それをやっぱり出せなかったんですよ。

櫻本:いやー、違うでしょ。

木ノ戸:違うの?

櫻本:いやぁ、自分の中にこんなに面白い一面があったんやなーって。

木ノ戸:気づいたって感じ?

櫻本:気づいたっていうか…。

木ノ戸:出てきた? 知らん間に?

櫻本:そう、知らん間に。

更田:裏の京一ってもんが出てきたんですね(笑)。

木ノ戸:裏じゃないで。表の方やで。

XL:おもしろ。

木ノ戸:だからスウィングに来るまでずっと裏・京一で生きてきたんですよ。

沼田:そういうことですよ。

木ノ戸:もし今からスウィングより給料のいい、前に勤めてた木材店のようなところに勤められるとしたらどうですか? 

櫻本:たぶん壊れます。無理ですね。人間関係が、もう…。

木ノ戸:人間関係を作ってしまいましたからねえ(笑)。

 

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ひらめき気にしない人の「強さ」

木ノ戸:XLさんは? 手帳もらったのっていつ? 何歳とか分かんない?

XL:中学校入ってからかな。

木ノ戸:クラスは普通の学級? 「なかよし学級」みたいなのは?

XL:あったけどそこじゃなかった。

沼田:XLさんは中学校卒業して、左官屋さんになってすぐに辞めて、毎日ゲーセンと家との往復という、15年間の引きこもり時代に突入ですよね。その頃とスウィングとどっちがいいの?

XL:どっちも変わらへん。スウィングの方がまし。

木ノ戸:ましっ!?? …10点満点でゲーセンが1点ならスウィング何点?

XL:5点。

木ノ戸:ええくらいやね(笑)。それがこの人の強さやな、たぶん。明日スウィング無くなってもこの人平気やで。テレビあるしな(笑)

更田:じゃあ、テレビが無かったら?

XL:なんもせーへん。寝てる。

全員:(爆笑)

 

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ひらめき「弱さ」を受け入れ、さらけ出すこと

木ノ戸:増田さんも手帳もらったのって20代ですよね。

増田:そうやと思いますよ。自衛隊辞めてちょっとしてからですかね。

木ノ戸:手帳もらうことで何か変わりました? ショックでしたか?

増田:無いっすねぇ、僕は全然。バスがタダになったし、映画も安くなったし、ラッキー! ってそれぐらいです。

木ノ戸:でも、あなた「障害者」ですよって二十歳過ぎてから突然、言われたわけじゃないですか。

増田:そこはあんまり深く考えない方がいいかなと思った。疲れるだけやから。

木ノ戸:さすが人生経験が違いますね(笑)。

沼田:左官屋とか自衛隊を経験して手帳もらって「福祉就労」に行き着いた。「福祉就労」っていうのは意識しましたか?

増田:それも無かったですね。1年間、なんもせずにぼーっと家にいたから、それではアカンと思ってて。

木ノ戸:いやいや、増田さん! いっしょにスウィングはじめてからも何度も何度もお金使いこんで凹んで、しょっちゅう何ヶ月も休んでたじゃないですか(笑)。ああいう時って何を考えてたんですか?

増田:しんどいですよ。何回も繰り返してばっかりやったから、しんどかったです。

木ノ戸:そうですよね。めちゃくちゃ重いしんどさですよね。僕は「障害者」というカテゴライズにも違和感をおぼえつつ、一方で「軽度」をなめんなよ! というか、そういう思いもあるんですよ。でもやっぱりね、「重度」の人の方がどうしてもしんどいって言われがちなんですよ。

増田:そこがおかしいですよね。天秤にかけられるってわけじゃないけど、重みがあるわけじゃないし。「重度」の人は周りからかわいそうって言われてるかもしれんけど何がかわいそうなん? って思う。

木ノ戸:単純にあの人は軽い重いっていうのはおかしいですよね。

櫻本:当の本人が自覚しているかどうか?

木ノ戸:自覚できないと思いますよ。京一さんも自分の何が障害なのか分からないでしょ? でも大抵、「軽度」の「障害者」の人は悩む。まれに悩まない人もいますけどね、XLさんとか(笑)。でも悩んでないけど、この人も15年引きこもるくらいのしんどさはあったわけやからね。15年ですよ(笑)?

更田:長い(笑)。

木ノ戸:増田さんはやっぱりあれですよね。お金の失敗とか、黙って休んでしまうとか、そういう自分の弱みみたいなものを平気でさらけ出せるようになったことが大きいですよね。

増田:はい。それは、もう。楽になりましたね。

木ノ戸:へルパーさんの食材費まで金庫こじ開けて使ってたし(笑)。でも、今は違うやん? お金の管理も人に任せて、嫌なことがあって部屋に引きこもったら「鍵開けて入ってください」って、もう僕らにスペアキーを預けてしまっている(笑)。でも、そこまでが長い道のりでしたよね〜。

櫻本:増田さんの場合はせめて連絡さえ入れてくれれば…。

増田:そら、分かっとるわ、分かってんにゃ! 連絡せんとあかんことぐらい自分で分かってんにゃ!

木ノ戸:それができれば世話ないわけやん(笑)。連絡できへんくらい凹んじゃってるわけやん、パパ。そこは分かろうや。

櫻本:パパじゃないっすよ。

沼田:連絡したい気持ちは重々あるんですもんね。

木ノ戸:連絡せなあかん、連絡せなあかん思い過ぎるから逆に連絡できひんねん。

増田:そういう感じやと思います。

櫻本:そういう人なんや。

増田:そういう人よ、そういう人。

木ノ戸:お金を管理を人に任せるとか鍵を預けるとかって、誰かに迷惑かけてるとか恥ずかしいとかって思ってますか?

増田:うーん、思ってないと思いますね。全然思ってないし、ありがたいです、それは。自分でも繰り返すって分かってますから。

櫻本:いや、むしろしてもらった方が…。

木ノ戸:楽に生きていけるもんね。自分が楽に生きていった方がきっと周りの人も喜ぶんよ。やっぱり自分が元気な方が周りも楽しいに決まってるし、自分も楽しい方がいいし。そのためには内に閉じこもってしまってたら誰もハッピーじゃないというかね。みんな、増田さんみたいに自分の欠点やできないことを「無理なんや」って受け入れることができたらいいのにね。

更田:人に頼ろうって思えたらいいですね。

櫻本:難しい。割り切れるか、割り切れないか?

木ノ戸:どうかなあ。じゃあ「健常者」って言われている人に、なんの苦労もなんの苦しみもないかって言ったらそんなことないわけじゃないですか。みんな色々あるわけやん。沼田君なんてスウィングで働き出してから悩みっ放しって言ってるんやで? 悩まなかったことないって(笑)。でも、それって「障害者」だからとか「健常者」だからとかじゃないやん?

沼田:違います。

増田:違います、それは。

木ノ戸:だからスウィングは平気で弱さを見せられたり、迷惑をかけ合えるとこやと思うし、そういう社会にしたいんですよ、僕は! なあ、XL!

XL:(無視)

全員:(爆笑)

木ノ戸:そうやってね、みんなが迷惑や心配を平気で当たり前にかけ合えたら、「迷惑」とか「心配」って言葉すら無くなるじゃないかと思うんですよ。…違うかなぁ。例えばゴミブルーも今では地域の中で当たり前の存在になってるやんね。たぶんやけど(笑)。

増田:それはむっちゃなりましたね。

更田:最初は警察に通報されたりとかしましたけどね(笑)。

木ノ戸:びっくりされたりしたでしょ? それがもう当たり前になってんねん。当たり前にやってるうちに、誰も相手にしなくなるわけですよ。だから、いい意味でね、そういうことをどんどん当たり前にしていくことが大事やと思うんよね。…違うかなあ。

増田:なんでもかんでも「違うかなぁ」って(笑)。たぶん合ってますよ。

木ノ戸:まあ、それにしても全盛期の増田さんはすごい根性やったと思いますよ。出勤率3割て(笑)。野球で言うたら、まあまあええ選手やけど、働くっていう意味からしたらだいぶ低いですよね(笑)。それが今は100%ですもんね。

増田:いやいや、ありがたいことです。自分はなんも言えないです(笑)。

木ノ戸:京一さんは木材店時代、20年間無遅刻無欠勤よ? しゃべる人もおらんのに無遅刻無欠勤ですよ? もう、機械やで。ロボット。ロボ山川豊(笑)。

櫻本:ていうか、休めることがすごいよ。

木ノ戸:ね。思いますよね?

櫻本:言うちゃなんやけど、ほんとは休みたかったんよ。でも…。

木ノ戸:「ほんとは休みたかった」って、また今ええこと言うた! これで泣きよんねん、全国の読者が泣きよんねん(笑)。

 

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ひらめき「障害者」探しから「健常者」探しへ

木ノ戸:じゃあ、自分が「障害者」だとして、「軽度」だと思いますか?

櫻本:分からん。思いつかん。どっからどこまでが「重度」で、どっこらどこまでが「軽度」かが分からない。

更田:手帳は「B判定」ってなってるけど…。

沼田:誰かが決めたんでしょうけどね。

木ノ戸:みんなそうでしょ? けど二十歳を過ぎてから急に「障害者」って言われて、さらにそこに「軽度」ってつけられる。あなたの障害は軽いよって。僕はスウィングに来るまでの京一さんの人生の方が相当「重度」やと思いますけどね(笑)。

櫻本:そもそも障害ってどういう意味なんかなって。何をもって障害っていうのか? そして何をもって健常っていうのか? その区別が自分にはつかない。

木ノ戸:あのね、「障害者」探しってみんな上手なんですよ。「障害者」探しも上手やし、「障害者」を増やすのもみんな上手なわけです。でも、もう逆やと思うんやな。「健常者」探しをした方がええと思うんやな、これからは。

増・更・櫻:あぁー。

木ノ戸:「健常者」はどこにおるんや? って。でも、いないのよ。どこにも見当たらない(笑)。

櫻本:どういった人が「健常者」?

木ノ戸:常に健やかな人です。

更田:常に健やかねぇ…。

沼田:ずっーとですよ?

増田:ずっと健やか…。

木ノ戸:デューク更家とか?

全員:(爆笑)

更田:久しぶりに聞いた、その名前(笑)。

沼田:デューク更家でもそら、風邪ひいたりすることもあるでしょうし、落ちこむことも悩むこともあるでしょうし。

木ノ戸:え? あるの? モナコに住んでても? じゃ、「健常者」じゃない(笑)。

沼田:そうですね(笑)。

更田:お金持っててもねぇ…。

櫻本:何が健やかなんかね? もう、分からへん。

木ノ戸:だから「健常者」探しをしたらいいと思うんですよね。ほな、みんな気づくよ、あ、どこにもいないって(笑)。「障害者」の対義語は「健常者」やけど、「健常者」の対義語って必ずしも「障害者」じゃないと思うんですよ。そうすると「健常者」もいないでしょ、「障害者」もいないでしょ。ほな、もう、ひとりひとりでしかないんですよ…って、言いながらちょっとキレイすぎて恥ずかしい(笑)。

櫻本:じゃあ、別に「軽度」やら「重度」なんて分ける必要ないん違う? なんで分けるの?

木ノ戸:それは極端に言えば、この社会の中でいかに上手に金儲けできるか? っていうことの逆算やと思うんですよ。「軽度」とされる人はあんまり稼げない。「重度」とされる人はもっと稼げない。まあ、相当偏った考え方かもしれませんけど(笑)。でも社会の許容範囲がどんどん狭まって、その仕組みに合わない人がどんどん「障害者」にされてしまってる感じがします。そういう寂しい世の中になってるんやなあって思う。けど、美談じゃないけどね、そういう世の中だからこそ、僕らは出会えたわけじゃないですか。それはいいことですよね? なぁ、XL!

XL:(無視)

全員:(爆笑)

増田:そうですね、それは。

更田:もちろん。

木ノ戸:じゃあ、「軽度」の「障害者」って呼ばれて良かったですねえ(笑)?

増田:うーん。それはちょっとどうなんかな(笑)。

更田:スウィングに来れて良かったなって、それだけです。

木ノ戸:でも、それって「軽度」の「障害者」って言われたからでしょ?

更田:まあ、そうですけどっ!

木ノ戸:まあ、そうやな。そんなバッサリとはいけへんわな。でも、そう言い切った方が気持ちよくない?

増田:まあ、言い切らんよりも言い切った方が。たぶん、それは。

木ノ戸:いろんな葛藤はあるよね。葛藤はあると思うけど、ああ良かったって思えた方がね。

櫻本:まあ、開き直れるかな。

木ノ戸:そうですよね。だって出会えてなかったんやもん、京一さんと。なんか途中で卵工場かなんか行きかけてたけど(笑)。

全員:(爆笑)

木ノ戸:それでもやっぱり割り切れないですか?

櫻本:ん? 何が? 卵ですか?

全員:(爆笑)

木ノ戸:まぁ、単純に良かった、悪かったとは言えないですよね。だけどまあ、みんなスウィングに来て、こうやって話できたり笑い合えたりするのは最高ですよね。

更田:スウィング、最高です!

木ノ戸:よし!それじゃあ、お疲れ様でした!

 

2016年5月6日(金)の夜、スウィングにて。

(フリーペーパー「Swinging Vol.20」/特集:「軽度」の「障害者」と呼ばれて。より転載) 

 

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「弱さ」という根幹

 

ふと、気づいたのだ。あ、「弱さ」なんだと。この数ヶ月間、内省的な日々を過ごすうち、とにかくふと、この言葉が舞い降りてきたのだ。スウィングの根幹にあるもの、そして自分の根幹にあるものが、「弱さ」なのだと。戸惑う。…弱さ? …「弱さ」が根幹? 戸惑うが、同時にそれが間違いでないことも確信している。

 

スウィングにはるか君という人がいる。はるか君はスウィングに来てからの1〜2年、なかなか自分に合う仕事が見つからず、ただただ毎日、スウィングの中をウロウロ歩き回っていた。僕たちは焦った。早くはるか君に合った仕事を見つけなくてはとひたすら焦り、はるか君の「強さ」はなんだ? と、あれやこれやと試行錯誤を続けた。でも、どうしても見つけられない…。もう手詰まりになってしまったある時、ハッとこう思った。あ、はるか君に「強さ」なんて無いんじゃないかと。そんなもの、別に必要ないんじゃないかと。そうして「強さ」探しを止めた時、そこに立ち現われたのは何だったか? それは他ならぬ、はるか君のありのままの姿だった。ウルトラマイペースで、雨風が大の苦手で、上品なようでいて実は結構な毒も持っている、はるか君という存在の、唯一無二の、ありのままの姿だった。僕らは「強さ」探しに躍起になる余りに、はるか君のありのままを見つめ、認めることを忘れてしまっていたのだ(はるか君、ごめんね)。それからのはるか君の毎日が100%ハッピーになったかというとそんなことはない。はるか君はこれまで通りウロウロと歩き回り、風のように絵を描いたり描かなかったり、大嫌いな雨風を思う存分怖がったり、様々な感情の中を揺らぎながら生きている。

スウィングに増田さんという人がいる。増田さんはお金の管理がとにかく苦手で酷い浪費癖があって、ずっと長い間、数々の失敗を重ね続け、その度に何ヶ月も家に引きこもった。数年前、(ここでは書けないような)ある事件が起こったことをきっかけに、僕は増田さんに遂に提案した。何もかもオープンにしましょう、出来ないものは出来ないと諦めて、当たり前に笑って話しましょうと。そうしてずっとずっとオブラートに包まれ、腫れ物に触るように扱われてきた増田さんのお金にまつわる問題は、スウィングの誰もが当たり前に知るところとなり、「弱さ」を受け入れ、そしてスッと手放した−お金の管理を全部、人に委ねたのだ−増田さんの表情は次第に明るくなり、明るくなり、最低30%だった出勤率は100%にV字回復した。そして今、増田さんはスウィングにたくさんやって来る見学者にまで、超ド級の失敗談の数々を自慢げに話したりしている。

人のことばかりでなく、僕自身のことを書こう。僕は小学4年生の頃から「学校」への“行き辛さ”を感じ始め、14歳で鬱を発症、15歳の頃には絶望の果てに死を選ぼうとしたが、何とか生き延びた。勉強も運動もできた。通信簿には5しかなかった。友だちも多かったし、女の子にも人気があった(と思う)。それでも僕の十代は、一貫して深い「闇」に覆われていた。毎日が地獄だった。僕は「学校」というものに“過剰”に適応し、本来の自分の、ありのままの姿を殺しながら生きざるを得なかったのだと思う。僕は最近、15歳の自分によく会いに行く。よく頑張ったな、もう頑張らなくていい、弱いままでいい、そのままでいいと強くきつく抱き締めるために。

 

この世の中を生きてゆくにはもちろん「強さ」も必要だ。だが、その裏側には必ず「弱さ」がある。誰にだって、多かれ少なかれ、そして様々に。そのことに目を向けず、ひたすら「強さ」ばかりを求める社会を僕は憎む。ココルームの上田假奈代さんの言葉を借りるならば、僕たちはポップで愉快な集団のふりをして、環境美化団体のふりをして、あるいはアート団体のふりをして、その実、誰もが安心して、それぞれに弱っちろい、ありのままの自分で生きられる、そんな場所づくりを命懸けでしてきたのだと思う。

次の10年もスウィングは走り続ける。中指を突き立てて、アッカンべーをしながら戦い続ける。この先もきっと、幾多の困難が待ち受けていることだろう。けれど僕たちは恐れない。なぜなら僕たちがゆらゆら揺らすブランコ(=スウィング)を強く支えているのは、無敵の「弱さ」なのだから。

「弱さ」。それは殆ど「強さ」と同義である。

(フリーペーパーSwinging Vol.20/「揺れるシセツチョー」より転載)

文・木ノ戸昌幸(きのと・まさゆき)
NPO法人スウィング理事長。1977年生まれ・愛媛県出身。立命館大学文学部日本文学専攻卒。 NPO、演劇、祇園のスナック、遺跡発掘等々の活動・職業を経て、「毎日笑える。」という理由で知的障害のある人に関わる仕事に就く。2006年にNPO法人スウィングを立ち上げ、「障害福祉」の枠を超えた創造的な取り組みを通して、社会を変えてゆきたいと願ったり願わなかったり。黄色が好き。でも青も好き。


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